“海の砂漠化”に“プラゴミ問題”。海を守るために知るべきこととすべきこと[教えて!井植美奈子さん]
さまざまな環境問題とともに叫ばれる二酸化炭素(以下、CO2)削減。その観点だとフォーカスは森にいきがち。だが……CO2吸収の大半を担っているのは「海」である。意外な事実について今回も、教えて!井植美奈子さん。 ▶︎すべての写真を見る
多くの人が、森林が大気中のCO2を減らし、酸素を作ってくれている光合成の仕組みを習ったと思う。そのとおりなのだが、実はCO2の吸収は森林以上に海が吸収している。 「地球全体で人類が放出しているCO2総量のうち、31%が海による吸収、12%が森林、残りが大気中に放出されていて、地球温暖化の原因になっています」。(井植さん。以下すべて)
海洋保全には欠かせないポイントがここにもある。我々人類が排出するCO2が増えることで気温が上昇し、海面温度も上昇、磯焼けがおこり海中の藻が減少する。これがいわゆる「海の砂漠化」で、藻が少なくなることは、そのまま海におけるCO2吸収力低下に直結する。
「海の砂漠化」を止めたアメリカの実例
「大気中に放出されたCO2は陸でも海でも吸収されています。さらに大気中のCO2は酸性雨となって海にも降ってきます。CO2を減らす対策は、海の生態系にとっても大変重要な課題なのです」。
世界自然保護基金(WWF) によれば、CO2が海に吸収されると海水の酸性化が進むとされている。サンゴの白化が起こり、貝類など海洋生態系の基盤を担う多くの生物がその打撃を受けるとされている。 ただし、反対に藻類はCO2を吸収して成長する。藻類はまた、「海のゆりかご」と呼ばれるほど多くの生物の住まいや食料となり、生命を育む。そうしたことから、海外では海藻を養殖する試みも行われている。英語で海藻のことをケルプと言うが「ケルプの森の復活プロジェクト」には成功事例がある。
「パソコンで有名なヒューレッド・パッカードを母体とした、ディビッドアンドルシールパッカード財団が支援する、モントレーベイ水族館が、ケルプの森を復活させたんです。ディビッドパッカードさんのご息女で海洋学者のジュリーパッカードさん率いるチームによって、彼女の海洋環境に対する情熱をサポートする形で、取り組みが行われたんです」。