特別支援教育は全人類に有効です。
今月のおはなし 特別支援教育は全人類に有効です。
教員養成セミナーを読んでるナイスなみなさま、こんにちは。平熱です。 ふだん、 SNSで「特別支援教育は全人類に有効です」の一本槍で発信を続けている現役教員です。主に知的障害のある子どもたちが通う特別支援学校で10年くらい働いています。 ありがたいことに、わたし自身が教員採用試験を受験する際に購読していた唯一の雑誌「教員養成セミナー」さんからお話をいただき、1年間の連載をさせていただくことになりました。センスあるよねこの雑誌。 これから毎月に渡り、特別支援学校、特別支援教育のお話を中心に教員採用試験を受験するみなさまの役に立ったり立たなかったりする話をしていきます。どうか薄目でお付き合いください。 早速ですが、今この誌面を目にしている受験生の中で「特別支援学校(学級)教員」を目指して受験に臨む方はどのくらいいらっしゃるでしょうか? きっと、ほんとに少数だと思います。 だから、もしかしたらこんな風に思ってる方もいるかもしれません。 「いやいや、高校教員になって大学受験を目指す子どもたちを指導していくわたしには特別支援教育なんて関係ないじゃん」 ちょ待てよ。 そう思うのは今回からはじまる1年間の連載をすべて読んでからでも遅くない。わからせてやるよ。 特別支援教育は、全人類に有効だってな!!!! 顔でも首でも洗って待ってやがれ! おっと、すみません。 取り乱したので、カームダウンして呼吸を整えますね。特別支援学校でもよく見られる光景です。子どもたちが興奮してしまったときは、刺激の少ない静かな環境で心身を落ち着けられるようにサポートしていきましょう。 それではまず「特別支援教育」についての説明を文部科学省のHPより抜粋します。 “「特別支援教育」とは、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものです。” なんか漢字ばっかでよくわかりませんが、主語は「障害のある子ども」たちです。ここで「自分には関係ない」と思わずに続く文章を読んでください。「一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行う」ですって。 これ、どう考えても障害のあるなしなんて関係なくない? だってさ、簡単な言葉に置き換えると「この子たちの自立のためになにが必要かを把握し、その解決のために彼らの好きや得意を伸ばしていく。社会生活や学習生活における困りごとを減らしていくために、知識やスキルを身につけさせる指導支援」ってことなんだよ。 そうなんです。特別支援教育は、その対象である主語を「障害のある子ども」としていますが、その内容は障害の有無に関わらず、すべての子どもたちに有効なんです。いえ、訂正します。おじさんもおばあちゃんにも有効です。ひよこ鑑定士にも、ドローン操縦士にも有効です。 つまり、全人類に有効なんです。 たとえば、特別支援教育におけるエースで4番の「視覚支援」。これは「パッと見でわかる」ための支援です。文字や口頭指示ではわかりにくいことも、写真やイラストなら「パッと見でわかる」ことってありますよね。 外国の文字が読めなくても言葉が聞き取れなくても。あなたが外国のレストランで注文ができ、トイレに行けるのはメニュー表に写真があり、トイレをピクトグラムで表示する「視覚支援」があるからなんです。 こんな風に、特別支援教育は日常のいたるところに潜んでいます。どう? おもしろくない? 全人類に有効な特別支援教育を学べば子どもたちへの指導支援はもちろん、自分自身の困りごとや、生きづらさだって小さくできるからね。 関係ない人なんていないんだから! それじゃあまた次回。絶対読んでくれよな!! 平熱(へいねつ) 主に知的障害をもつ子どもたちが通う特別支援学校で10年くらい働く現役の先生。やさしくてちょっと笑える特別支援教育のつぶやきが人気を集め、 Xフォロワー数は9.2万人(2024年7月現在)。 小学部、中学部、高等部のすべての学部を担任し、幅広い年齢やニーズの子どもたち、保護者と関わる。「視覚支援」「課題の分解」「スモールステップ」「見えないところを考える」など、発達障害やグレーゾーンの子どもたちだけではなく、全人類に有効な特別支援教育にぞっこん。障害の種類や程度にとらわれず「この子はどんな子?」を大切にし、子どもを恐怖でコントロールする「こわい指導」はしない。「先生も子どももしんどくならない環境」で子ども、関わる大人たちのニーズを満たす働き方を模索中。 著書に『特別支援教育が教えてくれた発達が気になる子の育て方』(かんき出版)、『「ここ塗ってね」と画用紙を指差したわたしの指を丁寧に塗りたくってくれる特別支援学校って最高じゃない?』(飛鳥新社)、『むずかしい毎日に、むつかしい話をしよう。』(東洋館出版社)。 特別支援学校の先生として唯一の目標は、ねほりんぱほりんに出演すること。 *『月刊教員養成セミナー2024年9月号』 「平熱先生の特別支援教育 こんなこと大事にしてます」より 小中学校の通常学級の通う子どものうち、発達障害の可能性のある子どもが8.8%(=35人学級なら3人)いるという昨今。どの校種の先生になっても、特別支援教育は決して他人事ではありません。でも特別支援教育って具体的にどういう支援をするの? 何に気をつければいい? 特別支援学校ではたらく平熱先生に、特別支援教育のあれこれを毎月おはなしいただきます。