新車で買って30年間乗り続ける! 幸福のR32スカイラインGT-R VスペックII! 【クラシックカーフェスティバル2024 in 関東工大】
ネオクラシックカー人気は高まるばかり。同時に中古車相場も歩調を合わせて上昇中。ブームになってから買うのは大変だが、30年もの間乗り続けているうちにネオクラと呼ばれるようになったケースもある。新車購入したスカイラインGT-R VスペックIIとオーナーを紹介しよう。 PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru) 【写真】R32 GT-R VスペックⅡの詳細を見る 国産旧車の世界にネオクラ旋風が吹き荒れている。少々前まで国産旧車といえば'60年代や'70年代のキャブレター車を指す言葉だった。これは'70年代に巻き起こったオイルショック、さらには厳しさを増した排出ガス規制により国産車の性能が抑制されスポーツカーが消えていったことの反動。魅力ある新車が少なくなった結果、少々古くてもパワフルで楽しいエンジンを搭載するキャブレター時代のモデルが人気になった。この現象が昭和から平成にかけて続き国産旧車と呼ばれるジャンルが形成された。 ところが昨今では'80年代後半から2000年前後までのクルマたちがネオクラシックカーとして人気だ。従来の国産旧車はエアコンやパワステを装備するのが難しかったこともあり、乗れる季節が限られる。しかも防錆鋼板を採用する前の時代のクルマだから冬場に融雪剤を撒いた路面を走り続けるとボディが驚くほど良く錆びる。サビを誘発するからと雨の日に乗らないオーナーも多く、完全に趣味としてしか扱えない。だがネオクラシックカーならエアコンは効くしパワステ装備が当たり前。ボディが錆びて穴が開くこともなくはないが、あまり一般的ではない。しかもこまめなメンテナンスさえすれば通勤にだって使える。さらにいえば趣味のクルマを所有するオーナー層が若くなってきたこともネオクラ人気の要因だろう。 ネオクラ人気の筆頭株と言えるのがR32スカイラインGT-R。ご存知のように1989年に発売されたR32型スカイラインには、ケンメリGT-R以来16年ぶりとなるGT-Rが復活した。280psを発生するツインターボのRB26DETT型エンジンはGT-Rの伝統に則り直列6気筒DOHCを継承。新車価格は445万円と高価だったが、バブル景気だったこともあり売れに売れた。さらにグループAレースでの強さは圧倒的で、連戦連勝した結果ライバル不在となりレース自体がスカイラインGT-Rのワンメイク状態にまでなる。 販売もレースも絶好調だったスカイラインGT-Rには年々改良が続けられ、'93年のマイナーチェンジではブレーキ径の大型化となるブレンボ製キャリパー+ディスクローターを装備しつつ、17インチBBSホイールを採用する上級グレードとしてVスペックが追加されている。さらに翌年、Vスペックのタイヤサイズを拡大して225/50R17から245/45R17へとしたVスペックIIが発売された。 今回紹介するスカイラインGT-R VスペックIIは、なんと新車で購入され30年経った今も維持し続けている小嶋栄徳さんが所有される個体。クラシックカーフェスティバル2024 in 関東工大のグラウンドに展示されていたところ、やはり周囲のクルマとは一味違うオーラを感じて声をかけさせていただいた。しばらく話しているうちに新車購入された1オーナー車であることがわかり、オーラの正体が判明したというわけだ。 複数のオーナーが所有された個体の場合、いずれかの時期に改造やカスタムが施されるケースが多い。そうした個体をネオクラブームの今になってノーマルに戻す現象が主流になりつつある。こうした個体の場合、やはりどこかに違和感を感じてしまうもの。ところが小嶋さんのVスペックIIからは、そうした違和感がないどころか溺愛されて育ったクルマからしか感じられない素性の良さがヒシヒシと伝わってくるのだ。 小嶋さんは現在63歳なので、購入時は33歳だった。社会人になって10年以上が経ち余裕が生まれてきた時期でもあったことだろう。とはいえVスペックIIの新車価格は529万円に達していた。ここに諸費用やオプション装備などを加えると600万円ほどの総額になる。普通のサラリーマンだったから現金一括というわけにもいかず、300万円の頭金を入れて残りの300万円はローンによる返済となった。月々6万円を5年間払い続けることになるわけだが、それでもVスペックIIしか欲しくなかった。 購入時にオプション装備を複数選んだ小嶋さん。ストラットタワーバーやフットレストのほか、運転席左右に加えるニーパッドなどを選んでいる。なかでも珍しいのがボディサイドに貼られたステッカー。GTが白地でRが赤く描かれたもので、あまりお目にかかる機会のないもの。こんな純正オプションがあったのですか?と聞けば、装着した個体にはドア内側のタイヤ空気圧指定ステッカーの上へ、「ボデーサイドステッカー部品番号」と記された日産のシールが追加して貼られるのだそうだ。これは初見だった。 今でもRB26DETTの迫力あるエンジンフィーリングが最高だと語る小嶋さん。これまで右フロントのブーツが破れたくらいで大きなトラブルはない。まだまだ今後も維持させるつもりだそうだが、走行距離を重ねるにつれトラブルも出てくることだろう。だが30年で8万キロだから、10万キロを突破するにはまだ3年以上かかる計算になる。そう考えるとトラブルに遭うことなく過ごせるかもしれない。良い状態のまま楽しまれている小嶋さんに選ばれたこのVスペックIIは、なんとも幸福なGT-Rだといえそうだ。
増田満
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