子供たちの「やりたい」に寄り添う遊び場に 「砧・多摩川あそび村」上原幸子理事長 TOKYOまち・ひと物語
ショッピングモールが立ち並ぶ東京・二子玉川駅から15分ほど歩くと、多摩川の河川敷の一角に通称「きぬたまあそび村」(世田谷区鎌田)が現れた。原っぱで走り回ったり、木に登ったり、都会っ子にとって秘密基地のようなところだ。河川敷に遊び場が開かれるようになったのは20年以上前。運営を担うNPO法人「砧・多摩川あそび村」の上原幸子理事長(65)は、「子供たちの『やりたい』に寄り添える場でありたい」と目を細める。 【写真】遊び場にあるツリーハウスは子供たちに人気だ ■木登りや虫採り 11月中旬の午後。あそび村のスタッフらと子供たちが火にかけた鍋を囲み、笑い声を上げていた。草木染に使うため、河川敷で採った植物のクズを煮出しているところなのだという。 しばらくすると、今度は虫かごに入れたヤモリの観察に夢中になったり、木登りをしたり。リレーなどが始まることもあるのだとか。そんな様子をニコニコと見つめていた上原さん。「ここでは、トノサマバッタやねぐらに戻ってきたツバメが飛び回る姿を見ることもできる。他の公園にはない自然の魅力がある」と誇らしげだ。 多摩川の河川敷に魅了されたのは、子育て真っ最中だった30年ほど前。開放的な空間は絶好の遊び場になると感じ、長男が小学校に上がる頃、大田区から世田谷区に引っ越してきた。 ■もったいない場所 だが当時、河川敷は土日などに野球場などとして利用されてはいたものの、平日は人けがなく危ないとされ、地域では、「子供だけで行ってはいけない場所」とされていた。室内でコンピューターゲームに興じる子供が目立ち始めていた時代。「思いっきり遊べる河川敷が近くにあるのに、もったいない」。そんな思いが募った。 平成11年、子供たちの遊びがインドアへ傾きつつある現状を心配する地域の親たちとともに、河川敷を利用した遊び場づくりに向けて活動を開始。勉強会などを通じ、仲間を少しずつ増やしていった。 同じ頃、多摩川水系の河川整備計画の策定に向けた動きがあり、河川敷の活用について、行政側に思いを伝える幸運に恵まれた。そして遊び場の案が計画に盛り込まれ、採択に至った。 同12年には親たちが中心となって河川敷の一角で月1回の遊び場を開くようになり、行政、町会などの賛同を得て参加型の遊び場づくりをスタート。その後、世田谷区の自然体験遊び場となった。