イーロン・マスクとドナルド・トランプ…規格外の大富豪が世界をカオスに陥れる(中西文行)
【経済ニュースの核心】 米大統領選は共和党のトランプ氏の勝利だった。共和党は上院に加え、下院でも過半数を確保しそうで、「トリプルレッド」になるとみられる。世界は第1次トランプ政権以上にその言動を警戒しよう。 トランプ元愛人 口止め料返金の代わりに“不倫暴露”を希望(2018年) 第1次政権時、トランプ氏のツイートを世界中の人々がフォローし一喜一憂していた。そのツイッター社を買収し、「X」としたのがイーロン・マスク氏である。2022年11月に永久停止となっていたトランプ氏のアカウントを復活させトランプ氏は24年8月12日からXへの投稿を再開した。 マスク氏は「暗殺未遂事件」の後、公然とトランプ支持を表明した規格外の経営者。トランプ氏も規格外の政治家だ。共通項はともに一代で「巨万の富」を築いた型破りのビジネスマンということ。従来の社会常識では予想困難な行動をし、平気でリスクを取りに行く。マスク氏は、自身の政治活動委員会の「アメリカPAC」を通じてトランプ氏に献金、その額は10月中旬時点で少なくとも1億1800万ドル(約180億円)に達していた。この金額は、トランプ氏の最大支援者であるメロン銀行の創業者の子孫、ティモシー・メロン氏に次ぐ規模だ。 マスク氏は、中国でも手広く事業展開する電気自動車(EV)のテスラの最高経営責任者(CEO)で、大株主でもある。トランプ氏との緊密な関係が追い風になるとの期待から株価が11月6日に急騰、マスク氏の純資産は3137億ドルと、約3年ぶりに3000億ドル(約46兆円)を超え、世界一の大富豪になった。 トランプ氏はマスク氏の事業に利益をもたらすような動きを公然と示唆する。EVへの移行を遅らせる計画を再考すると述べた。またマスク氏の宇宙開発企業「スペースX」と同社の火星到達に向けた取り組みへの支持を表明している。 トランプ氏は、マスク氏を天才と称え、政府支出削減を指揮する正式な役割を与えることを検討していたが、新設される「政府効率化省」のトップに起用すると発表した。 ■米大統領選の公約はどうなる? 「Make America Great Again」を掲げるトランプ氏の主要公約は、法人税を21%から15%へ引き下げ、接客業におけるチップへの課税廃止、住宅ローン金利の引き下げなどの税優遇。またパリ協定から再び離脱し、石油・天然ガスを増産し、輸入品全てに10%から20%の課税(中国製品には60%の課税)、不法移民の強制送還、AI開発規制の緩和、暗号資産への政府規制の廃止などである。 株式市場は見切り発車の動きを見せているが、トランプ氏の選挙公約はどうなるのか。まさに世界は「カオス」に入り込んだようだ。 (中西文行/「ロータス投資研究所」代表)