オメガ3、プロバイオティクス…そのサプリ、本当に認知症予防になっていますか?【山田悠史医師】
ここまで聞けばもう、「明日からオメガ3で認知症予防!」と考えるのに十分と思われるかもしれません。しかし、実際のところはこれで十分とは言えません。 なぜなら、例えばこんなストーリーを考えることができるからです。オメガ3脂肪酸の濃度が高い人は、魚を日常的に食べられるぐらい裕福で、より高学歴、よく頭を使う傾向もあった。そして、実はこの学歴の良さやよく頭を使う傾向が認知症リスクの低さや脳の萎縮の少なさに影響を与えていて、オメガ3脂肪酸が高いことによる直接的な影響はなかった。 このような状況でも、オメガ3濃度の高さと認知症リスクの低さの間には相関関係が見られることになります。この場合、いくら魚を摂取しても、オメガ3のサプリを飲んでも認知症は予防できないことになります。このように、相関関係(AとBは関係がある)は必ずしも因果関係(AだからBである)を意味しません。
認知症予防にオメガ3のサプリがいいとは言えない
実際、オメガ3脂肪酸のサプリメントを用いたランダム化比較試験も行われています。このランダム化比較試験というのは、サプリメントを用いることと認知症予防の因果関係(サプリを飲んだから認知症が予防されたという関係)を証明するのにより適した試験です。このランダム化比較試験は対象を変えて複数回行われていますが、実はこれらの試験では期待された効果は見られませんでした(参考文献2,3)。 このように、相関関係が見られても、因果関係を証明しようとするとうまくいかないことがあります。理由は、先に説明した通り、あくまで相関関係が見られたことは隠された真の原因の「代名詞」でしかないことがあるからです。 以上から、現状では、認知症予防にオメガ3のサプリメントを摂取しましょうと勧められるだけの十分なエビデンスがないと言わざるを得ません。
山田 悠史