「DVや虐待の相手から逃げられるのか」 離婚後の共同親権、弁護士らが指摘する問題点
今年5月に民法が改正され、離婚後の父母の共同親権が可能となった。子と別居親の面会交流を巡る争いや、養育費の不払いなどの問題が続く状況に、親子交流の広がりを期待する声がある一方、別居親による支配の継続など不安も根強い。親子面会交流や、親権とDVなどの問題に取り組んできた専門家による企画が京都市で相次いであった。親子を巡る現状と、改正から2年以内とされた法施行の課題を考える。 【写真】「子どもの最善の利益は誰が判断するのか」 ◇
「(父母の)真摯(しんし)な合意は確認できるのか」「加害者を励ます制度になっていないか」「子連れ別居が抑圧されないか」「共同養育計画が押し付けられないか」 DVやハラスメント、性虐待などの困難事案を引き受け、離婚後共同親権への懸念を示してきた弁護士の岡村晴美さん(愛知県弁護士会)が、家族法改正の問題点を次々と指摘する。
裁判官や検察官、弁護士になるための実務教育を受けている司法修習生の有志が呼びかけて、京都市で開かれた「司法修習生フォーラム」。犯罪者の社会復帰支援や結婚の自由、優生思想など、司法を巡るさまざまな社会問題と人権課題について講師と議論し、全体会で「離婚後共同親権の問題点と法案成立の背景」をテーマに専門家による講演とパネル討論が行われた。
岡村さんは、DVやハラスメント被害を受けた人が子どもを連れて逃げたケースで「連れ去り」と非難されて刑事告訴されたり、「単独親権制度のせいで子どもに会えない」という誤った認識が広がったりした状況で共同親権導入の議論が行われたと指摘。「共同でやっていく合意すらできない父母に共同を命じることが子どものためになるのか」「DVや虐待が除外されずに共同親権が支配の手段に使われる可能性があるのでは」とし、「支配的な人、権力が強い人から逃れられなくなる」と危ぶんだ。 その背景には、2011年の民法改正で明記された面会交流が「原則実施」で運用され、虐待や暴力の除外が軽んじられ、子による面会拒絶の希望も押さえつけられてきた経緯がある。面会交流中の事件によって、ようやく運用の見直しが行われた。今回の民法改正について「条文上は原則共同親権ではないが、『子の利益のためお互いに人格を尊重し協力しなければならない』という理念的な条文が、原則共同親権として運用されないか」とした。