2025年「AI 5つの進化予測」、激変する“次世代”のAIエージェントやRPA、LLMとは?
予測3:リスクとコンプライアンスがAIで劇的に変革
金融業界におけるリスクとコンプライアンスの管理は、長年にわたり手作業や断片的なシステムに依存してきました。しかし、生成AIの導入により、このプロセスは劇的な変革を遂げていこうとしています。 たとえば、AMLやKYCといった金融犯罪防止のプロセスにおいて、生成AIがトランザクションデータや顧客の行動パターンを解析することで、不審な取引や潜在的なリスクを瞬時にフラグ付けする能力が高まります。 さらに、不正取引の可能性を評価し、警告の優先順位を自動的に設定するAIエージェントを稼働させることで、人間の担当者は最も重要な案件に集中できるようになります。 生成AIは、規制変更への対応をも根本的に変化させるかもしれません。金融機関は、年々増加する規制要件に対応するために、多大なリソースを割いてきました。AIは膨大な規制文書を解析し、新しい規制が既存のポリシーや手続きにどのような影響を与えるのかを特定します。 また、自動で修正案を提案し、新しい規制に準拠するための方針を迅速に作成します。この自動化により、人的エラーを大幅に削減し、規制対応のスピードを大幅に向上させることが可能です。 さらに、AIが説明可能性を可能な限り担保することにより、なぜ特定の取引がリスクと判断されたのか、どのようなデータに基づいてその結論に至ったのかを説明します。 これにより、規制当局とのコミュニケーションが効率的になるだけでなく、金融機関がAIを活用する際の透明性も確保できます。
予測4:次世代RPA「IA」が到来
金融機関の事務業務は一見定型的に見えながらも、実際には曖昧(あいまい)さや微妙な判断が求められる場面が多く含まれています。 たとえば、ローン申請のデータ入力や規制対応の文書作成など、手順としては決まっていても、文書形式の違い、不完全な情報、場合によっては規定外のケースに直面することも少なくありません。 このような業務において、インテリジェントオートメーション(以下、IA)はその特性を生かし、銀行の事務業務を支援する上で適したツールとなり得ます。 エージェンティックAIが不定形の仕事を自律的にこなす能力を持つのに対し、IAは定型的なタスクを得意とします。 しかし、単に決められた手順を機械的に処理するだけでなく、曖昧さを含む状況に対応できる点が、従来のRPAとの大きな違いです。IAはRPAの正確さと生成AIの柔軟性を組み合わせることで、曖昧なデータや不完全な情報にも対応可能な、新しい次元の業務自動化を実現します。 たとえば、ローン申請のデータ入力作業では、RPAが書類から基本的な情報を正確に転記する一方で、生成AIが不明瞭な箇所や欠落したデータを特定し、補完に必要な判断を下します。 この際、「このデータがどのフィールドに対応するのか」「入力が抜けている場合、どのように補足するべきか」といった曖昧さに対応することで、事務作業全体の品質を向上させることが可能です。 これにより、定型的でありながらも例外対応を必要とする業務をスムーズに進めることができるでしょう。 IAは、顧客対応にもその強みを発揮します。住所変更や口座情報の更新といった明確な手続きであっても、顧客の情報が不完全だったり、指示が曖昧だったりする場合があります。 こうした状況では、RPAが定型的な処理を担当しつつ、生成AIが顧客の意図を推測して不足情報を補完し、適切な手続きを選択する役割を果たします。結果として、顧客体験が向上するとともに、金融機関側の作業負担も軽減されます。 2024年後半には音声や動画処理が高度化され、マルチモーダル性が格段に向上した結果、AIによる支援範囲はさらに広がることになります。 ただし、IAの活用にはいくつかの課題もあります。曖昧さへの対応が完全でない場合や、AIが生成する判断の透明性が求められる場面では、依然として適切な人間の関与が必要です。 それでも、IAは強力なツールであることに変わりありません。これを活用することで、金融機関は日々の事務作業の精度と効率を大幅に向上させると同時に、顧客満足度をさらに高めることが期待されます。