2025年「AI 5つの進化予測」、激変する“次世代”のAIエージェントやRPA、LLMとは?
予測1:エージェンティックAI
AIエージェントがシンプルなタスクの実行から複雑なシステムまで幅広く対応することに対して、エージェンティックAIは自己学習が可能、より長期的な目標を考慮して自律的に行動する、状況に応じた柔軟性を備えているといった特徴を持つAIシステムです。 もう少し違いを見てみましょう。AIエージェントは特定のタスクを効率的に実行するように設計されます。 たとえば、カスタマーサポートでのFAQ対応や、ルート最適化などのシンプルな反復的タスクが主な用途であり、この2024年は主にこうした領域で生成AIの適用範囲が広がりました。 一方で、エージェンティックAIは、特に複雑でクリティカルなタスク(例:リスク管理、長期的戦略立案、リアルタイム市場分析など)にも適応できます。これにより、従来は人間の専門家が担っていた意思決定や運用の一部を代替または補完する役割を果たせるのではないか、という期待があります。 より複雑でクリティカルなタスクをエージェンティックAIが担う背景には、高度な自己学習能力があります。この能力は、AIが過去のデータや新たなフィードバックから独自に学び、自らの判断基準や行動計画を動的に最適化することを可能にするものです。 エージェンティックAIは、単にあらかじめプログラムされたルールに従うのではなく、新しいデータや状況を取り込み、その時点で最も適切と考えられる解決策を生成する能力を備えるというものです。 たとえば、金融市場において突発的な変動が発生した場合、エージェンティックAIはその変動をただ認識するだけでなく、それが市場全体に与える影響を即座に分析します。 そして、過去の似た状況から学んだ知識を基に、瞬時に最適な投資戦略を提案するだけでなくその判断の背景も明確に説明できます。このプロセスでは、単に指示されたタスクをこなすAIではなく、環境の変化を学習しながら対応を進化させる点がポイントです。 さらに、この自己学習能力によって、柔軟性と対応可能なタスクの範囲を大きく拡大することも可能です。たとえば、これまで分析対象になっていなかった未知のデータ形式が突然登場しても、過去に学んだパターンを応用して、そのデータを処理し、意思決定に活用することできます。 エージェンティックAIは、自らが下した決定の背景にあるデータ、ロジック、そしてシミュレーション結果を一貫した形で提示するため、特に規制が厳しい業界や顧客の信頼が不可欠な業務においても、AIの判断が適切かつ透明性があることを保証できるようになるでしょう。 より高度な業務への適用 上記に示すように、エージェンティックAIはより高度な業務にAIを用いてより効果的な意思決定支援を行うことが期待されます。 たとえば、経営戦略の立案と実行は、金融機関において最も高度な判断が求められる分野の1つです。特に金融市場は規制や競争環境の変化が激しく、外部要因と内部資源を瞬時に評価し、柔軟に対応する必要があります。 こうした業務において、エージェンティックAIは変化する状況を把握して複数の解決策を提示し、さらにその選択肢の中で最も効果的なものを優先的に実行することができるでしょう。 たとえば、新たな金融規制が発表された際、従来のシステムであれば人間が膨大な資料を解析し、その影響を評価するのに数日、あるいは数週間を要しているのが現状です。 エージェンティックAIの場合はその規制内容を瞬時に解析し、金融機関のポートフォリオや運用モデルに与える影響を幾度もシミュレーションし、さらにその結果に基づき具体的なリスク回避策や収益維持のための代替案を提案してくれます。 結果として、経営の次の打ち手を素早く実行することができ、競争環境上、優位に立てるようになるというわけです。 あるいは、たとえば新規事業の開発において、エージェンティックAIが過去の事業展開データを分析し、新たな収益機会を特定します。その上で、事業の成功確率を高めるための戦略を提案し、企業は新規事業開発のROI(投資収益率)を高めることができます。 さらにこのプロセスでは、AIがフィードバックを学習し、次回以降の提案精度を向上させることで、事業の持続的な成長を支えることになります。 このように、エージェンティックAIの真価は、その高度な自己学習能力と柔軟性により、戦略立案から実行、フィードバックまでのプロセス全体を自律的にサポートできる点にあります。 金融機関において、この技術を導入することは、経営戦略の精度と速度を大幅に向上させるだけでなく、変化の激しい市場環境においても競争優位性を維持するための重要なステップとなるでしょう。 AIの進化がさらに進む中、金融機関は、この新しい「エージェンティック時代」を積極的に活用し、未来への道を切り拓いていく必要があります。