【女性弁護士座談会】朝ドラ『虎に翼』と法曹界のジェンダー問題 鴨志田祐美/武井由起子/大沼和子
法曹三者の中での裁判官と弁護士の違い
大沼 私も裁判官時代に家裁に配属されたことがありまして、弁護士時代から少年事件をやっていたので自分自身は少年審判は、例えば調査官から試験観察にしようかなどいろいろ相談されても、あなたの考えでチャレンジしてみれば?みたいな感じで子どもと直接接して調査する調査官の考えを尊重していました。裁判官の良いところでも悪いところでもあるんですが、職権主義といって、このように裁判官は自分の考えに基づいて思うように審判できる。でも判事補のように裁判官になりたての人がなると、事件が多くて忙しいこともありますけれど、あまり疑問を持たずにやってしまうというところが見受けられる気がします。 そうするとさっきのお話みたいに効率よく調停や少年審判をするためにはどうするか、そういうことに裁判官の関心がいってしまう。迅速な裁判と丁寧な審理はどのように結びつくのかというところは課題として考えていく必要があるんじゃないかなと思います。 あと、法曹三者の中で今一番人数が多いのは裁判官なんです。確か25%ぐらいが裁判官。その次は検事で、なんと弁護士はビリなんです。裁判官が法曹三者の中では一番高い割合でいて、育休とか産休とか堂々と取れるし、育休が終わってもすぐ元のところに戻ることができる。検事はどうなのかわかりませんが、弁護士は違いますよね。実際に私が知っているほかの事務所でも、妊娠したらやめてもらうと。そこの事務所は男性が複数いて女性が一人いたんですが、男性がそう決めてしまったんです。その女性の弁護士はカンカンに怒って事務所を辞めてしまいました。 だから、弁護士も、今は多少は変わってきているのかもしれないけれど、妊娠出産の時はどうしても休まなければならない。ただ、休むことによって軽い事件しか与えられなくなる。マミートラックという言葉があるそうで、要するに周りは慮(おもんぱか)ってこの人は大変だろうからこういう軽い仕事しか頼めないみたいなところがあるそうです。弁護士としてそういうことを経験してる人も結構多いんじゃないでしょうかね。