【女性弁護士座談会】朝ドラ『虎に翼』と法曹界のジェンダー問題 鴨志田祐美/武井由起子/大沼和子
冤罪再審の中でもジェンダーの問題が
鴨志田 冤罪再審とか活動している中にもジェンダーの問題があって、私が弁護人をやっている大崎事件は、原口アヤ子さんという女性の冤罪事件なんですね。古く歴史を紐解(ひもと)くと、徳島ラジオ商殺し事件の冨士茂子さんが女性で初めて再審無罪になったんですけど、第2号が東住吉事件の青木惠子さん、第3号が湖東記念病院事件の西山美香さん。女性で再審無罪を勝ち取った人ってまだ3人しかいないんです。 冨士茂子さんや青木惠子さんはいわゆる内縁の妻という立場で、冨士さんは本妻になれないことで旦那に恨みを持って殺したという絵を描かれて犯人に仕立てられている。青木惠子さんは連れ子と内縁の夫と一緒に暮らすようになって内縁の夫と共謀して娘を保険をかけて焼き殺したと描かれる。湖東記念病院事件の西山さんは知的発達的な障害を持っていて男性と交際したことがない、そういう彼女につけ込んで男性刑事が彼女の抱いた恋愛感情を利用する形で自白を獲得する。 アヤ子さんも、しっかり者の農家の長男の嫁で一家を切り盛りしているというところを、生意気で勝ち気でというふうに取られて首謀者にされた。冤罪被害って男女問わず深刻なんですけど、こと女性の冤罪というのは、取り調べる側、裁判をする側は男性社会なんですね。そういう中でジェンダー的なバイアスによって女性が冤罪に陥れられていくという共通の問題があると思っています。 私は『虎に翼』の三淵さんというか寅ちゃんが「女性初の」というところに共感しているんじゃなくて、彼女が成し得ていたことですね。法や制度はどうしようもなくダメだったら変えるしかないんです。そういうところで彼女は法や制度を打ち破っていった。そこに私は共感するし尊敬するわけで、このドラマにすごく勇気づけられたということを一言添えておきたいと思います。 武井 そもそも法曹になる女性が少ないですし、司法試験は、数ある試験の中で、女性の合格率が男性より高くない珍しい試験です。学校教育自体が男性を想定して制度が設計されていると言えます。『虎に翼』はまさにそのあたりを描いてていいんじゃないかと思いました。