【高校サッカー】公式カメラマンが語る「撮影すること、記録することの大切さ」
12月28日(土)に開幕する冬の風物詩、全国高校サッカー選手権大会。公式カメラマンとして、40年以上にわたって大会を撮影し続けている小林洋さんに、高校サッカーを撮影することの意義、そしてそこから生まれた出会いについて聞きました。 ――高校サッカーのテレビ放送で楽しみにしている企画があるそうですね。 僕が好きなのは、「最後のロッカールーム」ですね。あれは素晴らしい記録だと思う。機材も小型化してきたので、取材もしやすくなってきてるはずなのでぜひ続けて欲しいですね。お願いがあるとしたら、データを絶対に消さないでおいてほしいんですよ。メインで映ってくる選手はもちろんなんだけど、ちょっと映っているだけの選手で、そこで何かをつかんだり、何か喜びを感じたりする選手が必ずいるんですよ。だから、記録データを消し去ってはいけないと僕は思います。僕はこれまでしつこくやってきたのは、その時点で見つけられなかったり、見つけにくかったり、あるいはまだ出会ってない場面ってあるよなと思うからなんです。残すことで生きるものがあると思うんですよね。
――高校サッカーの表紙を振り返っていると、その後活躍している方がいるそうですね 雪の決勝の翌年の年鑑の表紙を見てもらえますか?77回大会の表紙、帝京の5番、キャプテンですよね。この顔、見覚えがありませんか?そう、今回、帝京を率いている藤倉寛監督なんです。雪の決勝を2年生で経験し、その翌年はキャプテンとして選手権の準優勝を経験しましたね。
85回大会の表紙、盛岡商の選手、誰も気づかないと思いますが、女子サッカーで有名な藤枝純真の中村翔監督です。女子の選手権で優勝した時にインタビューしに行ったら、「高校サッカー年鑑で表紙になってるんですよ」って言われました。えっ、と思って確認したら、この表紙でした。恩師・斎藤重信監督からサッカーを学んだって言ってましたよ。 他にも、びっくりする出会いがあるんですよね。全然知らない先生がいらっしゃって、「実は親父もお世話になりました」と言われて、親子2代で高校サッカーに携われるのも幸せだなって思いました。首都圏開催になって50年近くたって、高校サッカーはらせんのように、渦巻いてつながっていくムーブメントなんだなって気がします。 ――高校サッカーを撮影する中で培われた絆に気づくこともあるそうですね。 今大会に出場する宮城・東北学院で7番をつけている佐々木智貴選手が、以前、高校サッカーをサポートしてくれていた会社のスタッフのお子さんなんです。先日電話がかかってきて、「実はね、私の息子がね、全国高校サッカー選手権大会に出るの」って言われたんですよ。その方が帯同してくれた欧州遠征ではベリンツォーナの大会で優勝したこともあって記憶に残っているんですよね。そういう話を聞くと、ひとつ時代は回るんだけど、つながっているんだなって感じがしますね」 宮城・東北学院は12月29日(日)に奈良・奈良育英とニッパツ三ツ沢球技場での1回戦に登場します。