漫才に格安塾経営、農業、仏教…M-1王者「笑い飯」哲夫さんが切り拓く「6足のわらじ」 一聞百見
ただ、これには後日談が。「決定的ミスを犯していたんです。後から博物館に行ったら、『歴史』は入ってなかった。館内に動く人形もいなかった」。どうやら記憶違いだったそうだ。
別の博物館に関するネタをもう一つ。平成27年に奈良国立博物館の文化大使に就任し、現在も名誉サポーターとして関わりが続く哲夫さん。「就任のきっかけはやはり博物館ネタで?」と尋ねるとそうではなく、ダウンタウン・浜田雅功さんとテレビ番組で奈良の神社を訪れたときの出来事だったそうだ。
《鳥居の前で浜田さんが放屁したのに対し、すかさず哲夫さんがボケて「神聖な場所で何ということを!」と言いながら屁を吸い込んだ》
映像を見た博物館関係者が「『屁を吸ってまで文化財を守ろうとしている。なんて文化財に造詣が深いのか』と感動して、大使に選んでくれはったそうです」。
そんなアホな-。思わずツッコミたくなるようなオチだが、そこから始まった博物館との付き合いはもう10年になる。
■本業はもちろん芸人だけど…
哲夫さんといえば、関連の著書も出すなど芸能界きっての仏教通として知られる。「小さいとき、家に来てくれたお坊さんのあげるお経のきれいさやリズムにしびれて」唱える言葉にどのような意味があるのだろうと興味を持った。
改めて、その意味を考えるようになったきっかけは高校の現代社会の授業で聞いた先生の言葉だった。「仏教は苦しみを乗り越える哲学や。煩悩の数が108なのは、四苦八苦(4×9+8×9)やから」。日常に仏教由来の言葉があふれていることも興味深く、生きる苦しみからの救済を説く仏教の教えはストンと胸に落ちた。
ただ、気恥ずかしさから仏教好きは家族にすら隠し続けてきた。ところが、ある収録で私物の抜き打ちチェックがあり、般若心経を大量に写経したノートが哲夫さんのかばんから見つかってしまう。「芸人仲間に『誰これ、気持ち悪っ!!』と散々いじられた」が、それだけで終わらず、「吉本から般若心経の本を書かへんか、と。会社ぐるみでいじってきた」。