漫才に格安塾経営、農業、仏教…M-1王者「笑い飯」哲夫さんが切り拓く「6足のわらじ」 一聞百見
お笑い芸人が講師を務める地域の小中学生に人気の補習塾「寺子屋こやや」。そんな一風変わった塾を大阪府内3教室で展開するやり手のオーナーは、人気お笑いコンビ「笑い飯」の哲夫さん(49)だ。教育格差をなくそうと経営に乗り出し今年で10年になるが、「ええ人感が出たら嫌」と当初はこっそり始めたそう。テレビで見ない日はない売れっ子芸人が塾経営に乗り出した理由とは。 【写真】父から継いだ田んぼの前で写真を撮る哲夫さん 平成12年に相方の西田幸治さんと漫才コンビ「笑い飯」を結成し、その翌年から始まった漫才日本一決定戦「M-1グランプリ」では9年連続で決勝に進出。当時の出場資格は「結成10年以内の若手」だったため、ラストイヤーとなった22年に頂点に立った。 劇的な展開から「ミスターM-1」と称されるも、「周囲から『よくそれだけ決勝に行ったな』と言ってもらうんですが、8回優勝できていないだけ」と苦笑する。 その時の優勝賞金の一部を充て、26年に始めたのが塾の経営だった。職を辞した大学時代の友人から「何か一緒にやろうや」と声をかけられ、真っ先に浮かんだのが教育だった。 「以前、吉本興業の社員から子供の通塾に月6万円かかると聞き、お金持ちの子しか塾に行けないようになったのかと驚いたんです」 自身が子供の頃に学んだ地域の学習塾は、数千円ほどの月謝で学べる寺子屋のような居場所だった。「どんな人でも気軽に行けるような塾があってもいい」と考え、自身が投資することで、生徒の月謝を割安にした。 教育格差への挑戦ですね、と熱っぽく問えば「ええことしているようなイメージがつくのが嫌で隠していたんです」とかわされる。こややには貧富の差にかかわらず、勉強が好きな子も嫌いな子も、まじめな子もやんちゃな子もさまざまな子供が集うという。 そんな生徒と相対する講師陣のほぼ全員、本職はお笑い芸人。生活のためのアルバイトが忙しくなり過ぎないよう報酬を支払うことで本業に力を入れてほしいという後輩への思いが根底にある。 「アインシュタイン」の河井ゆずるさんや「ツートライブ」など今をときめく芸人もブレーク前夜、教壇に立っていた。「子供にウケる授業をしようと試行錯誤すれば話芸の向上にもつながるし、子供も楽しく学べる。いい相互関係が築けるいいシステムを思いついたでしょ」