「『街づくり型』のフラッグシップ物件」…三井不・日鉄興和不が都内に竣工、新「物流施設」の機能
物流施設の高付加価値化の流れが加速している。三井不動産と日鉄興和不動産が東京都板橋区に竣工した「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」は、飛行ロボット(ドローン)の研究開発や太陽光発電による余剰電力の自治体への提供、地域防災への活用など物流以外のさまざまな機能を併せ持つ。交通の利便性の高さや施設の性能の訴求だけでなく、社会課題の解決にも寄与することで、競争力の向上を狙っている。(編集委員・古谷一樹) 【写真】物流施設「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」 首都高速道路の出入り口まで約2・7キロメートルの好立地に地上6階建て、1フロア約3万6000平方メートルの大空間。MFLP・LOGIFRONT東京板橋は都内にありながら広域配送拠点として活用でき、運送費の削減や配送時間の短縮を図れる。 同施設の特徴は、荷物の仕分けや配送だけではない。三井不動産の篠塚寛之執行役員ロジスティクス本部長が「『街づくり型物流施設』のフラッグシップ物件」と説明するように、物流業界や地域の課題解決に向けて関係者同士が連携する場に位置付けている。 その一つが、施設内に開設したドローンの実証実験の場「板橋ドローンフィールド」。日本UAS産業振興協議会とブルーイノベーション(東京都文京区)が監修・運営を担い、産学官の関係者を呼び込み、新たな技術開発や物流業界の課題解決に向けた取り組みを行う。 社会課題の解決では、ラストワンマイル配送や災害時の支援物資搬送、インフラ点検といったニーズに対応。広大な敷地や実稼働施設を活用しつつ、無人搬送車(AGV)との連携やドローンポートを生かした点検・配送など、実用化を見据えた研究・実験を進める。また施設内に開校した「KDDIスマートドローンアカデミー東京板橋校」で、関連産業を支える技術者やオペレーターを育成していく。 ドローン活用とともに、重要テーマに掲げるのが環境や防災への対応と地域との共生だ。環境対応では、屋上全面に約1万9000平方メートル、約4メガワットの太陽光パネルを設置。電力の地産地消の実現を目指す。余剰電力については板橋区内の73の区立小中学校に供給する。 防災に関しては、緊急着陸用のヘリポートとして活用できる高台広場と、隣接する板橋区立舟渡水辺公園を一体的に整備。地域住民約1000人を収容できる緊急一時退避場所としての活用も見込み、敷地内には「板橋区災害時配送ステーション」を設置。災害時に必要な飲料水や非常食を保管するとともに、区内の避難所に支援物資を配送する。 建設費の上昇やトラックの運転手不足など物流業界を取り巻く環境が厳しさを増す中、日鉄興和不動産の加藤由純執行役員企業不動産開発本部副本部長は「新たなニーズがある」と指摘する。冷凍・冷蔵や危険物の倉庫など専門性が高い分野に広がっている需要を見据え、物流事業をさらに加速していく考えを示す。