80歳仁左衛門「孝・玉」自然とイキが合う…気持ちは30年前のまま
26日まで大阪松竹座初春特別公演
人形浄瑠璃を歌舞伎化した「義太夫狂言」から、明治以降の新歌舞伎まで、幅広い芸域を持つ人間国宝の片岡仁左衛門が、11日に開幕する大阪松竹座の初春特別公演で坂東玉三郎と共演する。半世紀にわたってファンを魅了してきた名コンビが演じるのは 「お染久松物」 として知られる鶴屋南北作「於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)」と清元舞踊「神田祭」。松竹が創業130周年を迎えた新年の意気込みや作品の見どころを聞いた。(編集委員 坂成美保)
20代、初の悪役
「於染久松色読販」で演じる小悪党「鬼門(きもん)の喜兵衛(きへえ)」は、自身の転機になった役でもある。初役は孝夫時代の1971年。玉三郎の父・守田勘弥が後押しした。二枚目役が多かった仁左衛門にとって悪役への初挑戦だった。 「まだ20歳代。やったことない役柄だから最初は嫌でね。喜の字屋のおじさん(勘弥)が『やれ』と。その後、演じる度にせりふを少し変えて自分なりにつくっていった。喜兵衛がきっかけで役の幅が広がり、おじさんに感謝しています」 この作品が出発点となって2人の人気は急上昇。長身で清潔感あふれるコンビは「孝・玉」と呼ばれ、新たなファンを開拓した。サイン会には行列ができ、「孝・玉」で見たい南北作品のリクエストも寄せられた。それから半世紀、不動の人気で興行を支えている。
二人の色気
「神田祭」で演じる鳶頭(とびがしら)では江戸の粋を体現し、玉三郎演じる恋人の芸者との熱愛ぶり、漂う色気に観客は酔いしれる。「正月らしい明るい雰囲気で、踊りというより芝居をしている感覚です。お互い好き勝手やっていても彼とは自然に芝居のイキが合う」 好調な客入りは「怖い」とも。「いつまで続くだろうか。だんだん年を取ってお客様に『あの2人もそろそろダメだね』なんて言われるのが怖くてね」 80歳になって体力の衰えを感じる時もある。「気持ちと身体のギャップが30年はあるね。気持ちは30年前のまま。今はどうにか身体がついてきてくれる。もっと舞台に出たい気持ちもありますよ」