大腸がん検診の陽性率 痔の人はどのくらい? 内視鏡検査を受けたいタイミング…直腸がんが見つかったケースも
肛門の痛みがないのに下血、何かおかしい
大腸がんは男女ともに増えていますが、特に女性ではがん死のトップです。B子さん(52)も痔があり、便秘気味の時など便が硬いと、肛門痛とともに、トイレットペーパーに血液がにじんでいることがありました。逆流性食道炎による胸焼けなどの症状もあり、症状が強いと度々近くの「外科・内科」を標榜(ひょうぼう)するクリニックを受診し、併せて肛門の診察も受け、裂肛や痔核など痔の診断を受けていました。 ある時、肛門の痛みがないのに下血があり、「何かおかしい」と私のクリニックを受診され、大腸内視鏡検査を実施。すると肛門から2センチのところに4センチ大の隆起性病変が見つかりました。組織を取って病理検査を行うと、直腸がんとわかりました。
出血の原因を痔としてすませない
総合病院の大腸を専門にする消化器外科医に紹介しました。これだけ肛門に近いと以前なら人工肛門になったかもしれません。しかしB子さんの病変はある程度大きくても深く進んでいない早期のがんだったので、粘膜下層剥離(はくり)術という病変をそぎとる内視鏡手術を受けることができました。 Aさん、B子さん、いずれもがんの転移はなく、元気で過ごしています。患者だけではなく医師も、明らかに痔があると、出血の原因を痔と考えてすませてしまうことがあります。せっかく受けた便潜血反応検査で陽性となっても「痔の出血だから」と考えて放置してしまっては、検査を受ける意味がありません。痔を自覚している患者さんの便潜血反応陽性率は8.2%とする報告があります。痔があるからと言って、多くが陽性になるわけではない、ということです。 ですから便潜血反応検査で陽性、あるいは出血が続くようなら一度は大腸内視鏡検査を受けていただきたいと思います。
松生恒夫(まついけ・つねお)
1955年東京生まれ、80年慈恵医大卒。94年松島病院大腸肛門病センター診療部長。2003年、東京都立川市に松生クリニック開業。日本消化器内視鏡学会指導医で胃・大腸内視鏡検査の経験豊富。「便秘外来」を開き、食事療法による症状改善にも取り組んでいる。一般向けの著書は170冊を数え、中国語・韓国語に翻訳されているものもある。