大腸がん検診の陽性率 痔の人はどのくらい? 内視鏡検査を受けたいタイミング…直腸がんが見つかったケースも
胃と腸の整え方
消化器内科医の松生恒夫さんが、豊富な診療経験を基に、胃や腸の整え方を紹介します。 【図解】大腸検査 のみ込んで撮影する「カプセル内視鏡」とは
痔(じ)を持つ人は日本人成人の3人に1人とも言われ、時に出血を伴います。大腸がん検診で便潜血反応検査が行われていますが、痔の出血であっても検知されれば陽性になるので、「痔だろう」と思って放置してしまう方もいることでしょう。しかし、もしがんだったら。しかも、肛門に近い直腸がんだと、位置や進行度によっては、直腸の切除手術に伴い、肛門をふさいで腹部に開けた穴から便を排出する人工肛門にせざるを得ないこともあります。まぎらわしい痔と直腸がんの症状について考えます。
便潜血反応検査陽性だったが
長年、痔と付き合ってきたAさん(59)は、時々出血すると、かかりつけ医で処方された内服薬と塗り薬を使っていました。デスクワークが多く、長時間座っているのも痔には望ましくありませんが、仕方ありません。毎年の健康診断の際、便潜血反応検査を受けていて、陽性になることもたびたびありましたが、「痔のせい」と考えて、大腸内視鏡による精密検査を受けたことはありませんでした。 ところが、下血がひどくなり、なんとなくおかしいと感じて、私のクリニックで大腸内視鏡検査を行ったところ、肛門から3センチのところに6センチ大に隆起した病変(ポリープ)が見つかり、組織を採取して病理検査をすると直腸がんの診断。近隣の総合病院の消化器外科を紹介しました。
放射線治療と手術の併用で人工肛門回避
ある程度進行したがんだったので、直腸を切除して人工肛門になる可能性もありましたが、近年はさまざまな工夫で、できる限り肛門の機能を残す方向で治療が行われています。Aさんの場合も、最初に放射線治療を行ってがんを小さくしてからがんを切除することで肛門の機能を残すことができました。 「がんとは考えたくないし、出血は痔のせいだと自分で納得していましたが、もっと早く大腸内視鏡検査を受けておけば良かった」とAさんは話していました。