トランプ氏

（ブルームバーグ）： 米大統領選挙の共和党候補、トランプ前大統領は23日、米農機大手ディアがメキシコに生産拠点を移せば同社に高い関税を課す意向を示した。

米国の農家と貿易に関するイベントで、ディアがメキシコに生産拠点を移すとの報道に言及し「もしそのようなことをするなら、米国向けの販売を望む製品全てに200％の関税を課すと、今まさにディアに通知しているところだ」と述べた。

ディアは今年に入り、事業コストの上昇と需要の減少に直面しているとして、イリノイ州で503人、アイオワ州で310人の従業員を解雇すると発表した。また、これまで米国内で行っていた生産の一部をメキシコに移すため、同国で土地を取得している。

ディアの株価は米通常取引終了後の時間外取引で一時２％超値下がりしたが、その後は下げ幅を縮小した。

ディアは南米や欧州でも事業を展開する世界最大の農機メーカーで、緑と黄色のトラクターで知られる象徴的な米企業。イリノイ州モリーンに本社を置くディアは声明で、2019年以降、米国内の工場に20億ドル（現行レートで約2870億円）を投じており、米国での製造にコミットしていると述べた。

同イベントはペンシルベニア州で開催された、米国の農家に対する脅威に焦点を合わせたフォーラムで、トランプ氏はこの重要な激戦州で支持を得ようとしている。トランプ氏はディアへの警告に加え、中国が500億ドル相当の米農産物を購入するという合意を順守していないと非難し、自身が米大統領に返り咲いた場合にはこの問題を中国の習近平国家主席に提起すると言明した。

トランプ氏は20年に中国といわゆる「第１段階」の貿易合意に達し、中国が米輸出品の追加購入を確約した見返りとして対中関税の一部を引き下げた。追加購入には500億ドル相当の農産物も含まれていたが、実際の購入量は公約を下回り、ピーターソン国際経済研究所の調査では、中国は21年12月までに確約した商品およびサービスの60％未満しか輸入しなかったことが明らかになっている。