伝説のレーシングポルシェ“ナナサンカレラ”風のダックテールがテーブルに! 157万円の落札価格は「レース史を体現したアート」としては格安か
歴史的な空力パーツがコーヒーテーブルに昇華
アメリカの有名な名車オークションサイト・Bring A Trailerに、ユニークなアイテムが出品されて注目を集めました。なんとそれは、往年のレーシングポルシェを思い出させるガルフカラーで彩られた“ナナサンカレラ”のダックテールスポイラーをアレンジしたコーヒーテーブルだったのです。 【画像】「えっ…!」これが“ナナサンカレラ”風ダックテールスポイラーをアレンジしたおしゃれなコーヒーテーブルです(11枚)
クルマのパーツは、単なる機械の部品ではありません。その中には、機能性を追求する過程で生まれた独特の美しさがあります。それは時として、現代アート作品さえも超える芸術性を持っていると考えます。 今回、最終的に1万ドル(約157万円)で落札されたこのユニークなコーヒーテーブルは、自動車文化とインテリアの想像力豊かな融合を体現したものといえるでしょう。 使われているテールスポイラーは、1973年のポルシェ「911カレラ RS 2.7」のために開発された歴史的パーツを忠実に再現した複製品。 当時、ポルシェは、「911」の高速安定性に頭を悩ませていました。車体の基本デザインを損なうことなく、高速走行時に発生する揚力を抑制する必要があったからです。その解決策を導くべく起用されたのが、ドイツの空力学者ヘルマン・ブルストでした。 ブルストはそれ以前に、ポルシェ「917」の開発においてサーキットや競技特性に応じた空力パッケージの最適化で素晴らしい実績を残していました。 彼は少数精鋭のチームを率い、「911」のフロントエアロダイナミクスの改良と併せて、この特徴的なリアスポイラーを開発しました。高速域での空気抵抗の低減とリアホイール上のダウンフォース向上という、相反する課題を見事にクリアしてみせたのです。 興味深いのは、このスポイラーの愛称にまつわる話です。“ダックテール”=アヒルの尾という名称は、当初、ポルシェのマーケティング部門が必ずしも好意的ではない意味を込めてつけたものでした。 しかし、このパーツを装着した「911カレラ RS 2.7」は、当初の予定販売台数500台をはるかに超える1500台以上をセールス。現在では最も価値の高い「911」のひとつとして確固たる地位を築いています。 ●テーブルとしては高価だが芸術作品として見れば妥当!? 今回のテーブルの製作者は、オリジナルと同じ寸法で製作されたファイバーグラス製ダックテールを巧みに利用しています。 4本のステンレス製脚部には水平調整機構を備えており、実用性にも配慮。強化ガラス製の天板は地上高17インチ(約43cm)に設置され、奥行き26インチ(約66cm)、幅42インチ(約107cm)というコーヒーテーブルとしては適度なサイズに設定されています。48ポンド(約22kg)という重量も、安定性と取り回しの両立という点で絶妙なバランスといえるでしょう。 1万ドルという落札価格は、一般的なコーヒーテーブルとしては確かに高額です。しかし、ポルシェのモータースポーツ史を体現する芸術作品として見れば、むしろ妥当な評価といえるかもしれません。 かつてレース界を席巻したガルフカラーを身にまとい、伝説的なリアウィングを優雅なインテリアへと昇華させた本作品は、オートモビリア(自動車関連収集品)とインテリアの新たな可能性を示唆しています。このテーブルを囲んで交わされる会話は、自然とモータースポーツ談義へと花開くことでしょう。 クルマのシートをイスに流用したり、エンジンやタイヤ&ホイールをテーブルにしたり、インテリアとしてクルマのパーツが成立するのは面白いですね。 なお、当テーブルのリアウイングは複製品であるため、あまり多く出回るとポルシェの法務部が怒りそうな品であることもつけ加えておきましょう。
古賀貴司(自動車王国)