6割増の急成長「シチズン エル」を手掛けたある女性社員 地球環境や人に配慮したサステナブルウォッチ
このような徹底したサステナビリティはそれだけでも付加価値になり得ますが、『シチズン エル』の最大の付加価値は、ブランド誕生に秘められた、そのストーリーにありました。 ■ストーリーには「身近な思い」が登場する 『シチズン エル』を手掛けたのは、商品企画部に所属する女性社員のMさん。 私は2019年9月に、一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会の立場でMさんに取材させていただきました。 『シチズン エル』は当初、ヨーロッパ市場向けのブランドとしてスタートしたのですが、ちょうどMさんが育児休業明けで職場復帰したタイミングで、日本を含めた全世界で販売できるようなブランドに立て直すリブランド企画がもち上がっていました。
その担当者に抜擢されたのがMさんでした。 2014年から世界共通の美を再検討し始めました。 それが何なのか、毎日プロジェクトチームで議論していく中で、「人にたとえたら?」という話をしたときに、オードリー・ヘプバーンやダイアナ妃の名前が挙がりました。 その共通点は何かと考えて、積極的に社会貢献をしていたという内面の美に気づいたのです。 オードリー・ヘプバーンはその可憐な美しさで一世を風靡(ふうび)した女優ですが、晩年は、アフリカなどの貧困地域に赴いて積極的に社会福祉活動を行っていたこともよく知られています。
めざすものがMさんの中で明瞭になり、確固たるものになりました。 「内面の美しさ・輝きをたたえる時計をつくりたい」 では、時計の内面の美とは? それを追求する日々が続いていたある日、隣の部署の社員が一風変わったTシャツを着ているのが目にとまります。尋ねたところ、国連のTシャツだと説明されました。隣の部署はCSRの部署ですが、当時MさんはCSRのことをあまり知りませんでした。 これをきっかけにCSRの部署と共同体制をとりながら、SDGsの視点から見ると、時計の製造から販売まで、一連の過程には、実にさまざまな問題があることに気づきました。先ほどの紛争鉱物の問題、二酸化炭素排出量の問題、過剰包装や数カ国語で書かれた分厚い取扱説明書などです。