老舗煎餅店が「おかき」に見出した新たな魅力とは 「ディップするおかき」は本来あり得ない新食感
若い人にもおかきを食べてほしい!と誕生した「きりのさか」
同社の購買層は、60歳代以上が最も多い。そこで若い人にもチョコレートやケーキなどを買う時と同じテンションで、また大切な人へのプレゼントとして選んでもらえるようにと大人の女性をターゲットにし、2011年に生まれたのが「桐乃坂中央軒」というブランド。2018年にはリブランディングして「きりのさか」とし、よりコンセプトを際立たせたおかきを誕生させた。 さらに、22年から、東京駅構内に、専門店「きりのさか by Chuoken Senbei グランスタ東京店」を展開。素材の風味豊かで軽やかな食感の「玄米ちっぷす」と、ドライフルーツとナッツなどがのったスティック状の「ライスパレット」という2種の独創的なおかきを販売している。 「きりのさか」ブランドの3つめの商品として開発されたのが、この「ディップするおかき」だった。
アンケート1万8000件から嗜好を分析
全社プロジェクトとして行われた新商品の開発は、今まで通りでは新しいものを生み出せないという決意のもと、2023年8月からスタート。顧客はどんなことに心が動き購買行動に結びつくのか、おかきにはどんな可能性があるのかを探った。 消費行動に関するアンケートを実施。3000人×6回という1万8000件の調査結果から導き出されたキーワードは、「新しい刺激」や「冒険」「季節ならではの特別感」など。そこからプロジェクトチームで出されたさまざまなアイデアは約50件にも上った。「レアチーズケーキの土台におかきを使う」など多くの可能性が検討され、絞り込んでいった結果、「おかきの本質的な美味しさ+αとして新たな価値の提供を目指す」として「ディップするおかき」という表現にいたったという。つまり、ソースをつけて(ディップして)味わうという発想だ。
ソースを買い集めて試行錯誤の日々
方向性は決まったものの、どんなものを作ったらいいのか、まるで見当がつかなかったそうだ。 「どういう組み合わせなら心が動くのか、方向性を定めるのが大変だった」と開発担当者。そこで目についたあらゆるソース類を買い集めて、自社のおかきと組み合わせる日々が始まった。 これまでの商品開発は、おかきの味が決まれば完成だった。しかし、新商品の開発では、ディップソースとの相性の難しさやソースが美味しくてもおかきの味が負けてしまうなど試行錯誤が続いた。おかき単品でも、ディップした時でも、それぞれおいしいものを見つけるのが大変だったという。 試作を繰り返していく中で、みんなが「これだ!」と一致する瞬間があった。それが、今回の2種類だ。 因みに、とうもろこしのおかきは、既存の人気商品・とうもろこしをベースにしている。既存品は醤油を使用しているが、こちらの商品ではトマトサルサに合うように、塩味にした上、とうもろこしの量を増やして、ディップしやすい形状に変えるなどの工夫を行った。卵や玉ねぎなどを使ってフレッシュ感を出すための努力も惜しまなかった。