農作業に向かい独特な癒やしを満喫できる。「Farming Simulator 25」インプレッション
PCゲーム界には「○○ Simulator」という作品群が数多く存在しており、世界中の開発者たちによって新作が今も生み出され続けている。もはや「○○ Simulator」シリーズは一大ジャンルと言っても過言ではない。これらの作品の多くは「お仕事シミュレーター」と呼ぶべきもので、現実世界に存在する実際の職業体験を提供することを目的としているのだ。 【画像】祖父のWalterが農業の基本を教えてくれる。要するにチュートリアルだ 今回はそんな中の一作、プレイステーション 5/Xbox Series X|S/PC用大規模農業シミュレーションゲーム「Farming Simulator 25(ファーミングシミュレーター 25)」をプレイするチャンスを得られた。本作は、文字通り広大な農場を舞台にした農業や林業、畜産業を楽しめる作品だ。「Farming Simulator」シリーズは2008年から続く老舗シリーズで、ファンに安心と信頼を提供し続けているシリーズ作品となっている。 今回は本作の序盤部分をプレイできたので、そのインプレッションをお届けしていく。 ■ 丁寧なチュートリアルで農業初心者も安心! 本作のチュートリアルは、プレイヤーの祖父にあたるWalterが物語の形で農業の基本を教えてくれる形式で進行する。この農園を孫であるプレイヤーに託すという設定のもと、基本的な農作業の流れを指導してくれるのだ。 チュートリアルで学べる基本的な作業の流れはかなり丁寧なものだった。まず「カルティベーター」という作業機で畑を耕すところから始まり、続いて「シーダー」という種まき機で種を蒔く。その後、実った小麦を「コンバイン」で収穫し、収穫物を「トレーラー」に積み込んで買取所へ持っていき売却するという一連の流れを学ぶことができる。 1つの文にすると情報量がかなり多いが、1ステップ毎に操作説明があるし、次に何をすれば良いかを解説してくれる。筆者はシリーズ作品をプレイするのは初めてだが、この段階では全く問題なくプレイできた。 このチュートリアルの存在により、プレイヤーは「何から始めれば良いのかわからない」という事態を避け、スムーズにゲームを開始することができる。これはかなりありがたいポイントだった。 しかし、チュートリアルで学べるのはこの基本的な流れのみで、「あとは自由だ!」と放り出されることになった。ゲーム側から目標を提示されることもないので、赴くままに農業などを楽しめばいいのだが正直、ここからの展開は少し戸惑ってしまった。とはいえ、この基本を押さえたチュートリアルがあることで、プレイヤーは最低限の農業知識と農業機械の操作方法を身につけた状態でゲームを始められる。 ■ 自由度はかなり高い。1ステップ毎に農業の基本を学んでいこう 先ほども紹介したとおり、チュートリアルが終わると、一気に自由になると同時に、その先の展開に戸惑ってしまった。 農業についてもっと丁寧に教えてくれるNPCも存在するのだが、話を聞いてみると「プラウ」や「肥料散布機」、「肥料」、「石灰」、「除草機」など、様々な機材などが必要だとまくし立てられる。シリーズのベテランプレイヤーならばスムーズに理解できるかもしれないが、初めてプレイする筆者はあまりの情報量に混乱してしまった。 しかし、本作には「契約」というシステムが用意されている。これは他の農家の作業を手伝うことで報酬を得られるシステムだ。「雑草除去」や「肥料の散布」など、自分の農場でも必要になる作業を請け負うことができ、機械の使い方を学びながら報酬を得られるという一石二鳥の仕組みになっている。 さらに、この契約作業で使用する機械はリースで借りることができる。つまり、高額な農業機械を購入する前に、基本的な操作を実際に試すことができるのである。このシステムにより、プレイヤーは他人の畑で農作業のイロハを学び、その経験を活かして自分の農場での栽培に取り組むことができる。 このことから、ゲーム序盤は契約作業を中心に進めていくのが王道の進め方だと感じた。後々に必要となる様々な農業機械の購入資金を貯めることができ、なおかつ実践経験も積める。こうした自由度の高さと、それを支える学習システムの存在が、初心者プレーヤーをベテラン農家へと育ててくれるのだ。 ■ ガイドが多く、迷いにくくなるような仕組みも 本作で扱う農業機械の操作は実に多岐にわたる。アタッチメントの接続や取り外し、機械の上げ下げ、各種スイッチのオンオフなど、覚えるべき操作は数多い。しかし、本作ではこれらの操作方法が画面左上に常時表示されており、プレイヤーが混乱する要素を最小限に抑える工夫がされている。これにより、操作体系自体は複雑だが、プレイヤーは比較的スムーズに作業を進めることができるのだ。 また、本作には「AIヘルパー」という機能も実装されている。この機能を使用すると、若干の支出は伴うものの、作業の一部をAIに任せることができる。広大な畑をじっくりと耕したり、丹念に種を蒔いていくのは本作の醍醐味の1つではあるが、一方で細かい作業を全て手作業で行うのは時として面倒に感じることもある。そんな時にAIヘルパーが作業を代行してくれるのは、非常にありがたい機能だ。 このように本作は、複雑な操作ながらも、プレイヤーへ配慮する設計になっているのだ。操作方法の常時表示によるわかりやすさと、AIヘルパーによる作業の自動化オプションは、プレイヤーの快適なゲームプレイを支える重要な要素なのだ。 ■ 地道な農作業が楽しいのが「Farming Simulator」の魅力 本作の魅力は、まず何より農作業そのものが持つ独特の楽しさにある。自分の畑を愛でるように丹念に耕し、種を蒔き、肥料を散布し、雑草を除去していく。このように手間暇をかけて作物を育てるからこそ、収穫の喜びがあるのだ。 また、トラクターを代表とする農業機械を操作する体験も、本作の大きな魅力の1つだ。多種多様な農業機械の操作を楽しむことができるのが楽しいし、特に大型の機械は独特の存在感があり、ゆっくりと展開される作業機器には不思議な愛らしさすら感じる。さらに、実在する機械が登場する点からも、開発陣のリアリティ追求への姿勢が伺えるのである。 本作のゲームプレイは一見すると地味な作業の積み重ねに思えるかもしれない。だが、この作業の積み重ねを楽しむのが本作の醍醐味なのだ。日常の喧噪を忘れ、土に触れ、畑に向きあい作物を育てる。日々、我々がプレイする派手なアクションゲームや銃を打ち合う殺伐としたFPSというゲームとは真逆の作品。だからこそ、ゲーマーを惹きつける魅力が本作にはある。 さらに本作は農業以外にも畜産業や林業といった分野にまで及んでいる。こうした幅広い職業体験を内包している点も、本作の大きな魅力である。 「○○ Simulator」シリーズの老舗として築き上げた実績は伊達ではない。安心と信頼の「Farming Simulator」シリーズ最新作「Farming Simulator 25」。本作は農作業という貴重な体験と、そこから生まれる独特な癒やしを我々ゲーマーに楽しませてくれるユニークな作品なのだ。 (C) 2024 GIANTS Software GmbH. All Rights Reserved.
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