トヨタとNTTが5000億円規模の「通信連携型安全基盤」を構築、通信とAIを組み合わせた新たなアプローチ
すでに通信業界からの反応も出始めている。KDDIの高橋誠社長は11月1日の決算会見で、この構想への参画に意欲を示した。同社はトヨタ製の車両など1000万台以上にネットワークを提供している。5G網や通信衛星を組み合わせた「途切れないネットワーク」の構築で貢献できるとの考えを示している。 本構想の実現に向けては、いくつかの重要な課題が浮かび上がる。最も大きいのは技術面での処理需要の規模感だ。前述のとおり、トヨタの試算では、2030年には現在と比べて通信量は22倍、計算量は150倍に膨れ上がる。これまでにない規模のデータをリアルタイムで処理し、AIによる予測や判断に活用できる基盤を、いかに構築していくのか。
実用化に向けての道のりも険しい。当面は日本国内でのモデルケース作りに注力するものの、グローバル展開に際しては各国で異なる規制状況や交通環境、通信環境への対応という大きな壁が立ちはだかる。 経済面での懸念もある。5000億円という巨額投資の回収について、NTTの島田社長は「コストは薄く広くご負担いただく」という考えを示し、長期的な視点での段階的な回収を強調する。極端な値上げではなく、徐々に吸収していく形で、持続的な投資サイクルを作り出すことを目指す。
石井 徹 :モバイル・ITライター