”Jリーグ最強の企画屋”に聞く「地域とスポーツのしあわせな関係」(上)
競技場と国際宇宙ステーションとの交信、ゴジラによる始球式、子ども向け番組とのコラボと、数々の話題を振りまいてきた川崎フロンターレ。そのプロモーション部長を務める”Jリーグ最強の企画屋”こと天野春果さんは2016年11月、『スタジアムの宙にしあわせの歌が響く街: スポーツでこの国を変えるために』(小学館)を上梓した。 天野さんが2020年東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会に出向するまであと5日という1月25日、この本にも登場する熱烈なフロンターレサポーターでファシリテーターの大枝奈美さんを聞き手に、横浜でトークイベントが開催。多くのフロンターレサポーターが集まる中、まちと市民に”愛される”クラブのつくり方について、軽快なトークが繰り広げられた。
スポーツってとにかく楽しい
大枝 昨年はクラブ創立20周年でしたが、現在ホームゲームは毎回何人ぐらいが入るのでしょうか。 天野 2016年の平均が約22,000人で、収容率は82.5パーセントです。 大枝 素晴らしい。早くから行かないと席がなくなりますよね。 天野 最初の数年は数えられるぐらいしか入っていなかったですからね。 大枝 地元の人はお酒持っておつまみもって、飲みに行くぞという感じでしたね。 天野 麻雀やりに行くんじゃないかみたいな。ここからスタートだったんですね。 大枝 (当時の写真を指して)「鬼木最高」なんてフラッグがありますね。 天野 平日ナイターなんかは無観客試合みたいで、誰のためにやってるのかわからない、お客さんよりフラッグの方が多いような状態でしたね。 大枝 これを経て今があるわけですね。天野さんはそもそもどうしてフロンターレに来たのでしょうか。 天野 とにかくコロンビアが大好きで、鳥男(※コンドルの衣装をまとったコロンビアの名物サポーター)と仲良くなるために、1994年のワールドカップのアメリカ大会に行ったんです。ハメス・ロドリゲスなんかまだ生まれてないんじゃないかっていうくらい前で、鳥男と仲良くなるためにはもう、体中に金粉を塗って、コロンビアのカラーで行かないとと。その前のイタリア大会をテレビで観て、スタジアムにはそういう人ばっかだと思ってたんですが、テレビは本当に嘘つきですよね。もちろんそういう人を抜いてるだけで、もう浮きまくりで。 大枝 変な東洋人だなと。 天野 アジア人なのに何でコロンビア応援してるんだみたいな。気温が38度くらいの中で頭クラクラしながら金粉を塗ってるから、暑くて苦しくて。そしたらコロンビアのサポーターが水を飲ませてくれて、仲良くなって。試合どころじゃなくて、写真撮影大会になって、コロンビアのテレビ局や新聞社から取材を受けまくりました(笑)。このためにスペイン語も勉強してました。 でも試合の前からこうやって浮かれて、翌日熱が39度出てぶっ倒れてたんですけど、スポーツってとにかく楽しい、試合は関係ないじゃないですか。スポーツすげーなと思うわけですよ。 アメリカのワシントン州立大学に行っていて、スポーツマネジメントの勉強には興味なかったんですけど、大学は単位のために中で働かせてくれるんです。広いフィールドがあって、どうやって試合を盛り上げるかっていうのも、学生にやらせてくれるんですね。マーチングバンドの演出なんかも、一人だけプロがいて、あとはぜんぶ学生が考えていました。カレッジスポーツでも、100億単位でお金が動くんです。1万2千人が入るコロシアムがあって、冬はバスケットで。アメリカでこういうのが肌で感じられたというのは、僕の原点ですね。 街のどこに行ってもグッズが売られていて、スーパーでも売ってるし、みんな生まれたときから、お爺さんお婆さんも身に着けるっていう。 大枝 街の人がみんな身に着けてるし、見に行くんですね。 天野 身に着けてない人なんて見たことないですよ。着けてないと落ち着かないですもん、みんなが身に着けてるから、浮きますもん。大学のアイデンティティー、チームカラーってすごく大事で、ここも今フロンターレに生きてるんですけど、水色は魂ですね。こういうものを日本で作りたいなあと。