【大学トレンド】「リケジョ」を増やす、大学の取り組みは? 合宿、思考体験、サイエンスひめこ…
中高生が研究室見学をしている間には、保護者に対して進路・就職相談会が行われました。ジェンダー協働推進センターの鈴木靜センター長(法文学部教授)は、「保護者からもたくさんの質問が寄せられた」と言います。 「ある保護者が『自分が文系だったので理系のイメージがわかない』と言うと、ほかの保護者たちが大きくうなずいていました。理系だと学費はどのくらいかかるのか、みんな大学院に進むのか、卒業したらどんな仕事に就くのか、どんな生活を送ることになるのかなどの質問があり、それぞれの内容に教職員が答えることで安心したようでした」
10年以上前から女性未来育成センターに関わってきた郡司島宏美・理工学研究科准教授は「当初から保護者の理解を促すことに力を入れてきた」と言います。 「学生の意識は大きく変わり、理系だからといって不安を感じる女子学生は減ってきていますが、保護者の考えはさまざまです。中高生くらいだと、保護者の考えに影響を受けやすいので、イベントにはぜひ保護者も参加してほしいと案内しています」
先輩の姿に憧れ
「サイエンスひめこ」では、オープンキャンパスで進路相談のブースを設けたり、小学生向けのサイエンス教室を実施したりもしています。梶原さんは、次のように話します。 「活動を通して得られるものが大きいです。司会などで大勢の人の前で話した経験は、今後卒業研究や学会発表などで役立つのではないかと思います。私は大学院への進学を考えていて、将来は研究職に興味があるので、『サイエンスひめこ』のメンバーの大学院生からは、研究室のことなど、いろいろと教えてもらっています。先輩たちがタフに研究に取り組んでいる姿を見ると憧れるし、モチベーションになります」 愛媛大学では、理系女子高校生の研修の受け入れも積極的に行っています。養殖業の発展に関する研究機関、南予水産研究センターでは、23年に岡山県の清心女子高校の生徒約20人が1泊2日の実習を行いました。担当した副センター長の後藤理恵教授は「実習の一番の目的は、科学は私たちの生活の中にある身近な学問だという点を理解してもらうこと」と言い、マダイの味を科学的に検証する実験では、海の中のいけすからマダイを取り、処理するところから取り組みます。 「例えば、捕獲するときに暴れた魚と暴れていない魚の味を比較するといったことを検証します。生命科学的な手法での実験ですが、最終的に味をどう感じるのかというのは社会科学的なアプローチになります。特に産業の世界では理系のアプローチだけでは不十分なので、文理融合で学ぶことが大事だということが伝わってほしいと思っています」(後藤教授) 前述の梶原さんは、中学生のときに「サイエンスひめこ」に出会っています。 「中学校で『サイエンスひめこ』のイベント案内をもらって、理科が好きだったので、参加しました。大学のキャンパスを案内してもらって、鳥類や魚類など生物が冷凍保存されているes-BANK(生物環境試料バンク)など専門的な施設を見学したことが印象に残っています。また、メンバーの方たちが生き生きとしていて楽しそうに説明してくれて、理系に進んだら私もこんな大学生になるのかなとイメージできました」 理工系女子を増やそうという「草の根」活動の成果は、少しずつ、確実に出ているようです。
朝日新聞Thinkキャンパス