【#佐藤優のシン世界地図探索77】モスクワで生まれた「進化した資本主義」とは?
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * ――モスクワ市内の広告が全て消えた。それは、広告によって人を刺激し、人為的な消費を作り出す経済との決別であり、もしかしたらこれが「進化した資本主義」のはじまりなのかもしれない......というのが前回の話でした。 佐藤 さらに、モスクワの地下鉄は午前5時から午前1時まで動いていますし、深夜でもタクシーは簡単につかまります。深夜に歩いていてもまったく危険はありません。そして喫茶店、カフェ、パブがものすごく増えました。そこで皆、政権の悪口を平気で言っています。 ――いい国じゃないですか。 佐藤 そうなんです。そんな感じですから、友達との食事の回数も増え、市民の満足度は高くなっていると思います。ソ連時代は国民が集まる場所を少なくしなければいけなかったんですけどね。 ――ソ連ですからね。 佐藤 あと、酔っ払いが減りました。皆、強い酒を飲まなくなっています。 ――昔、酔っ払いが多かったのは、社会に対する不満が多かったからではないですか? 佐藤 ウォッカをはじめとする強い酒で鬱憤(うっぷん)を晴らしていましたからね。 ――いまはそれが無いから、酔っ払って酔い潰れる必要がない。 佐藤 なので、友達やその家族たちをベースに飲んだり食べたりしています。 ――楽しそうですね。 佐藤 酔っ払いが少なくなったのには、まだ理由があるんです。 ――なんですか? 佐藤 ウイスキーがものすごく高いんです。『山崎』や『竹鶴』といったウイスキーのシングルショットが8000円でした。だから、ロシア人たちは国産ワインか安いビールを飲んでいます。 ――慎ましい! 佐藤 それから、あの大金持ちになったオルガルヒの連中がロシアに戻って来ています。 ――なんでまた?