【#佐藤優のシン世界地図探索77】モスクワで生まれた「進化した資本主義」とは?
佐藤 外国に行って「俺はロシアと縁を切ったんだ」と言ったところで、「これはロシアでの売り上げだろ」と指摘され、資産を取り上げられます。 ――西側用語で言うと「ロシア資産の差し押さえ」。 佐藤 そうです。だから、お金を持ってロシアに戻ってきました。それが投資の原資になっていくわけです。 ――この2年半で本当に多岐に渡る変化が起きているのですね。 佐藤 観光も国内で済ませています。特に人気なのが2014年にロシアがウクライナから併合したクリミアです。国内でルーブルだけで経済全てが回っている状態です。 ――それができないと西側は思って色々仕掛けたけれど、まったく効いてないと。 佐藤 この2年半で、ロシアは完全に外国に依存しない体制を作りました。 ――ロシアは内在している力がすごいですね。 佐藤 外に依存していませんが、ただし贅沢品として外国製品は全部入ってきています。 ――その贅沢品とは例えばなんですか? 佐藤 iPhoneやAndroidは全部買えます。メルセデスやBMWの新車も売っています。ネット空間は規制されていますが、「VPN」というサービスを使えば全て外せます。 PCだと規制が厳しいんです。特に一番厳しいのはMeta系で、Facebook、インスタグラムは完璧にアクセスできません。Xも頭のところは出てきますが、開くことはできません。一方、ワッツアップとテレグラムは完全に使えます。シグナルは動画と電話は繋がりませんが、チャットは可能です。 ――市民生活はおおむね良好だということですね。 佐藤 そうです。そして次に教育です。これもどんどん変わってきています。 ――どう変化していくのですか? 佐藤 まず、米国型の教育、西側の教育とは決別していきます。 ――徹底的な米国と西側の排除ですね。 佐藤 そして、高校までの基本教育、高等教育は全て無償化します。 現在、高等教育の無償と有償の二本立てです。無償だと大学は5年制、有償なら4年制です。いずれこれをすべて無償化します。ただ、高校から成績と金で大学に上がらないようにしています。同時に試験だけで大学に上がる人も3割に抑えるようにしています。 高校を卒業したら、とにかく働いてもらうのが原則です。なぜなら社会で働いて、大学で本当に勉強したいのか、3~5年かけて考えてもらうのが目的だからです。 学知が必要で大学に行くのか、それともビジネスを続けるのか。もしくは将来の自分の才能を伸ばすのか。それが農業ならば、農業の現場にいるのか、農場経営に進むのか。そこを考えさせるわけです。または、軍隊に入隊するという道もあります。 そういった形で、3~5年の社会経験を積んだ上で、高等教育が必要な人たちには大学で教育を受けさせようとしているわけです。 ――大学で非常勤講師をやっている自分から見ても、それは正解だと思います。