【#佐藤優のシン世界地図探索77】モスクワで生まれた「進化した資本主義」とは?
佐藤 ロシアにとっては、ですね。これは、西洋中心の世界と"パラレルワールド"になっているからです。逆に「自分たちが働くしかない」「自分たちでやるしかない」ということに気づかせてもらったわけです。だから「アメリカさん、ありがとう」という感じです。 ――反面教師ですね。 佐藤 何人かのロシア人に聞いたらこう言っていました。「いままで我々は西側から愛されようと努力してきた。しかしいま、愛される必要はない。もはやアメリカとは関係ない。アメリカ無しで生きていける」と。 ――決別宣言でありますね。 佐藤 このパラレルワールドで、欲望を掻き立てない資本主義が生まれています。そして、その資本主義はなにが楽しいかといえば、家族や友達とかと過ごす、そういう社会ですよね。 ――質問ですが、もし『資本論』を書いたマルクスがいまのロシアを見たら、なんと言うのでしょうか? 佐藤 マルクスの遺産から学んだことは「結局、大金持ちになるというのは、他人の労働を搾取することで、全然偉いことではないんだ」ということです。 なので、イーロン・マスクさんには「よくここまで搾取しましたね。底辺で働いている労働者たちは、あんたの会社から搾取されたのだ」と。ジェフ・ベゾスさんには「アマゾンの倉庫であれだけ労働者から搾取して、あんたは巨万の富を作ったのだ」と言うでしょうね。 ――マルクスがいまのモスクワを見ると、なんと言いますか? 佐藤 「戦争の一点だけ除けば、すごくいい社会だ」でしょうね。 次回へ続く。次回の配信は2024年10月4日(金)予定です。 取材・文/小峯隆生