「ほんの少しでいい」…「ありたい自分」と「今ある自分」にギャップを抱えるあなたにアドバイス
いままで、「大切な人と深くつながるために」「いじめられている君へ」「親の期待に応えなくていい」など、10代に向けて多くのメッセージを発信してきた作家の鴻上尚史さんが「今の10代に贈る生きるヒント」を6月12日に刊行した。その書籍のタイトルは『君はどう生きるか』。昨年ジブリの映画でも話題になった90年近く前のベストセラーをもじったこのタイトル。なぜ「君たち」でなくて「君」なのか。そこには鴻上尚史の考える時代の大きな変化があった。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『君はどう生きるか』(鴻上尚史著)より抜粋して、著者がいまを生きる10代に贈るメッセージを一部紹介する。 『君はどう生きるか』連載第41回 『「素敵な生活」が招く「恐ろしい病」…SNS世代を苦しめる「現代病」とは』より続く
「ありたい自分」と「今ある自分」のギャップ
「ありたい自分」というのは理想の自分です。 よくネットでプロフィールを大ゲサに書いている人が話題になります。本当は違うのに、お金持ちだとか、すごい学歴とか、ナイスプロポーションとかの自己紹介を書くのは、「ありたい自分」の分かりやすい例です。 もちろん、人間は、基本的に「ありたい自分」を持っています。それは当然のことです。 レギュラーになりたいとか、ダイエットに成功したいとか、いい成績をとりたいなんてのは、すべて「ありたい自分」です。 「ありたい自分」を持つことは悪いことではありません。それどころか、「ありたい自分」があるから、がんばれると言えます。それが目標になりますからね。 でも、「ありたい自分」と「今ある自分」のギャップ(差)が問題なのです。あまりに、「ありたい自分」と「今ある自分」が離れすぎていると、そのギャップに君は苦しむことになります。
大切なのは「少し」
「ありたい自分」は、「今ある自分」の少し上が望ましいのです。 大切なのは「少し」ということです。 例えば、マラソン大会で優勝して、周りからヒューヒュー言われるのが「ありたい自分」だとして、「今ある自分」は、ランニングなんかしたことない、なんて場合は、その差が大きすぎるわけです。 「とにかく完走」とか「全体の3分の2以内の順位」なんて目標だと、「ありたい自分」と「今ある自分」との差が「少し」になるでしょう。 少しの差は、君自身の素敵な目標になります。 問題集を1冊買ってきて、「ようし、1日で全部やるぞ!」と決心するのも、「ありたい自分」ですね。その気持ちはようく分かります。 でも、「今ある自分」は、毎日続けるだけでも大変だとすると、目標を「1日1ページ」にするのが「ありたい自分」との差を少なくする方法だということです。