Dellが「Dell Pro」や「Dell Pro Max」を導入した背景と真意
Dell Technologies(以下Dell)はCESで報道発表を行ない、今後リリースするPC製品の新ブランドスキームを発表。「XPS」、「Inspiron」、「Latitude」などのブランドをシンプル化し、一般消費者向け製品のブランドを「Dell」、法人向け製品のブランドを「Dell Pro」、ワークステーション向けを「Dell Pro Max」とすることを明らかにした。ただし、ゲーミングPCブランドは例外で、従来通り「Alienware」ブランドが継続して利用される。 【画像】Dell Technologies 会長 兼 CEO マイケル・デル氏 各ブランドの中で、日本語で言えば松竹梅に相当するPremium(ハイエンド向け)、Plus(メインストリーム向け)、Base(バリュー向け、ただしBaseは表示なし)に細分化される計画だ。たとえば従来のXPSは「Dell Premium」となり、Inspiron Plusが「Dell Plus」、InspironはDellというブランドに変更される。 Dellが開催した記者説明会では、同社の創業者で会長 兼 CEO マイケル・デル氏などの同社幹部が登壇し、同社の新しいブランドスキームの狙いなどに関して説明を行なった。 ■ エンドユーザーにもっと簡単に理解してもらうためにブランドをシンプル化とDell Dell Technologies 創業者で会長 兼 CEO(最高経営責任者)のマイケル・デル氏は「私がDellを創業したばかりの1985年に販売を開始した「Turbo PC」というPC互換機は、Intelの8088プロセッサに640KBのメインメモリ、そして360KBの5.25インチFDDというスペックだった。今となっては冗談のようなスペックだが、これが我々の出発点だったのだ。 そこからDellはさまざまなPCを40年に渡って作り続けてきたが、常にそれはお客さまが必要とするような製品。今回発表する製品は、Intelの最新プロセッサ、64GBのメインメモリ、4TBのSSDというスペックで、NPUを内蔵していてAIアプリケーションを効率よく実行できる。そうした新世代のAI PCでは、ユーザーは創造力をより高めて、生産性を高めることが可能になる」と述べた。 「今回のCESではそうしたPCの40年の進化をさらに加速するような新しいAI PCの製品群を発表する」とのべ、今回のCESで発表するAI PCの製品群がDellにとって重要な製品であることを強調した。 Dell Technologies 副会長 兼 COO(最高執行責任者) ジェフ・クラーク氏は、DellがPC's Limitedという社名だった頃からの社員で(当時の社員バッジも公開された)、前出のTurbo PCの後継製品では、品質保証のエンジニアからキャリアをスタートさせた根っからの“PC担当者”(PC GUY)。今回は「I Love PC」というジョークTシャツを着て記者説明会に登場すると、詰めかけたPC関連のメディア関係者からヤンヤの歓声を浴びた。 クラーク氏は「Dellでは、1993年にOptiPlex、1994年にXPS、1997年にPrecision Workstationなどさまざまな製品をこれまで提供してきた。しかし、今PCは大きな曲がり角を迎えている。というのも、生成AIのビジネスチャンスのうち90%は推論だし、今後50%のデータはエッジデバイス上で生成されると考えられている。今後生成AIによりPC上で実行されるワークロードはモダン化されていき、PCの使われ方は大きく変革していくと信じている」と述べ、PCが大きな変革期を迎える今こそ同社の製品群にも大きな変化を加える時期を迎えていると指摘した。 その上でクラーク氏は「ユーザーはシンプルにPCを使いたいと思っている、ユースケースやサブブランドを理解するのに時間をかけることを避けたい。そこで、サブブランドを廃止し、Dellブランドに統一する。それによりユーザーは、自分が購入したPCを一目で理解できる」と述べ、すべてをDellブランドで統一するという新方針を明らかにした。 ■ XPSはDell Premiumに、LattitudeはDell Pro、PrecisionはDell Pro Maxに変更される 今回の発表以前の、Dell製品ブランド名称(ノートPC向け)を表にしたものが表1になる。 従来のDellのPCブランドは、一般消費者向けには2つのブランド(XPSとInspiron)があり、法人向け(Latitude)とワークステーション向け(Precision)があった。また、一般消費者向けはハイエンドのXPS、メインストリーム向けのInspiron Plus、バリュー向けのInspironという3つのブランドが併存しているのに対して、法人向けとワークステーション向けのブランドは1つだが、製品の4桁の型番で、9000/7000番台であればハイエンド、5000番台であればメインストリーム、3000番台であればバリュー向けとなっていた。 理解してしまえばなんてことないのだが、整理しておかないと分かりにくいブランドスキームというのは、初めてDell製品を買うユーザーにはとっつきにくかったことは否定できない。 そこで今回、Dell、Dell Pro、Dell Pro Maxの3つにバッサリと整理。一般消費者向けが無印の「Dell」、法人向けがProの「Dell Pro」、法人向けかつ高性能向け、つまりワークステーション向けがPro Maxの「Dell Pro Max」となる。一般消費者向けが無印、法人向けが「Pro」、ワークステーション向けがPro Maxとだけ覚えておけばよいことになる。 それだけだと、製品が3種類しか展開できないことになるので、それぞれのブランドに日本語で言えば松竹梅に相当するPremium、Plus、Base(無印)という3つの段階を位置づける。それぞれハイエンド向け、メインストリーム向け、バリュー向けを意味することになる。 例えば従来はXPSブランドだった一般消費者向けのハイエンド製品は、今後は「Dell Premium」になる。同じくInspiron Plusだった一般消費者向けのメインストリーム向け製品は「Dell Plus」、Inspironだったバリュー向け製品は「Dell」になる。法人向けのDell Pro、ワークステーション向けのDell Pro Maxも同様に、上からPremium、Plus、無印とよりシンプル化される。 既にXPSやInspiron、Lattitude、Precisionブランドに慣れ親しんでいるユーザーにとっては、当初はやや混乱するとは思われるが、表にしてみると非常にシンプルなスキームになっており、PCに詳しくないユーザーでも一目で分かるように配慮されている。 ただし、今回の新しいブランドスキームで例外になっている製品がある。それがゲーミング向け製品で、こちらは今後もAlienwareブランドが継続される。DellによればAlienwareに関してはユーザーの認知度もほかの製品よりも圧倒的に高く、かつゲーミングPCは生産性向上に利用されるPCとは別のカテゴリの製品であるため、こうした判断になったという。 また、今回のCESでは、全ての新ブランドの製品が発表されたわけではなく、DellブランドはDell ProブランドのノートブックPCやデスクトップPCなどの一部製品にとどまっている。例えば、Dell Premiumの新製品は今回正式に発表はされず、参考展示にとどまっていた。しかし開発意向表明を行なっており、今年(2025年)の半ばあたり(おそらくCOMPUTEXあたりのタイミング)で発表する予定と明らかにしており、今後徐々にそうした製品が追加で発表されることで埋められていく形になるだろう。
PC Watch,笠原 一輝