〝助け合いライドシェア〟急拡大 本紙独自調査 全国25市町村に
住民が住民運ぶ
人口減に伴う地方自治体の財源難で公共交通が維持できず過疎化が進む悪循環の中、住民の農家らがマイカーを運転して他の住民を運ぶ“助け合いのライドシェア”が今年に入り、全国で急速に広がっている。日本農業新聞の取材によると、2005年に秋田県上小阿仁村で始まった試みは1月以降、9府県11市町村増えて計19都道府県25市町村となり、今後も増える見通し。専門家は「地域に根差す団体が参画できるかが鍵」だと指摘する。 【一覧表】公共ライドシェアを行う自治体 路線バスやタクシーが少ない「交通空白地」では、自治体やNPO法人、JAなど公共性の高い団体に限り、自家用車(白ナンバー)で有料送迎する「公共ライドシェア」が認められている。 国土交通省によると全国698カ所で運営され、自治体やNPOが所有する車を使い、バス会社などに運転を委託するのが一般的だ。労働者協同組合法に基づく団体が運営するケースも見られる。 ただ、過疎化の進展で委託先がなくなったり、車両を用意できなかったりする地域も増加。住民にマイカーで運転してもらう試みが増え始めた。公共ライドシェアの関係自治体に取材したところ、今年に入り9府県11市町村が実証実験や本格導入を開始。北海道から沖縄まで計19都道府県25市町村となった。 人口約500人の山梨県丹波山村は村内にタクシー会社がなく、免許を返納する高齢者も増加。17年にNPO法人・小さな村総合研究所が運営に乗り出し、「村民タクシー」の愛称で運行を始めた。シニアを中心に講習を受けた村民50人がドライバー登録し、村民や観光客を村内外の病院や駅などへマイカーで送迎。1キロ当たり200円の料金は全額がドライバーの報酬だ。年間利用者は500人。 関係自治体によると、運転を務める住民の中には農閑期にドライバーを兼業する農家も少なくない。一方、ライドシェアが必要な地域は過疎地が多く、運転のできる住民の確保が課題となっている。 公共交通に関する国の制度設計に関わる名古屋大学の加藤博和教授は「自治体がJAや生協など地域に根差した団体や交通事業者と連携して取り組むことが必要。組合員らが団体や自身の車でドライバーになれば持続可能な地域づくりにもつながる」と語る。 (糸井里未)
日本農業新聞