「国民民主」に絶対できない政策で「立憲」が形勢逆転する方法 「原発再稼働」の条件に「避難計画」を盛り込むべし 古賀茂明
■原子力ムラとベッタリ癒着 この提案を受けると、石破首相は断りにくい。石破首相は、元々原発推進派ではない。その理由の一つは、北朝鮮や中国に原発を狙われたら日本はひとたまりもないという安全保障上の極めて真っ当な懸念に基づくものだ。石破首相のこの懸念はそう簡単には払拭できない。 前述のとおり、原発事故は地震が原因になる場合が一番深刻なものとなる。福島や能登の被災者の心情に寄り添う姿勢を示す石破首相は、この面からも避難計画に万全を期すという提案を断ることはできないだろう。 この提案の優れたところは、やみくもに「脱原発」「原発ゼロ」と叫んだり、「再稼働反対」と言ったりせずに済むことだ。原発の再稼働を容認する自民党の立場に配慮しながら、原発を動かすために避難計画をしっかりしたものにしろというだけだから、原発推進派も反対はしにくい。避難計画が規制委の審査を受けていないと知った国民も、むしろぜひ審査してもらいたいと声を上げるだろう。 仮に、石破首相が前向きの姿勢を見せた場合、非常に困るのは国民民主だ。国民民主はバリバリの原発推進派である。再稼働や建て替えだけでなく、原発の新増設を進めることまで掲げている。 なぜそこまで原発にこだわるのかというと、それは、電力総連(大手電力会社やその関連会社労組が加盟する)や基幹労連(原発関連の重工メーカーなどの労組が加盟する)などの支援で当選する議員を抱えていて、これらの企業が喜ぶ政策を推進することが至上命令となっているのだ。原発推進の方が「103万円の壁」引き上げなどよりはるかに重要だと考えているかもしれない。 11月27日には、玉木代表は、首相官邸で石破首相と会談し、原発の建て替えや新増設などを提言した。その会談には、電力総連出身の議員も同席させている。原子力ムラとベッタリ癒着している姿を堂々と晒したわけだが、来夏の参議院選挙で電力総連などの支援を受ける目的で原発推進に汗をかくパフォーマンスを国民の前で行わなければならないほど、彼らは、業界と癒着した政党だということだ。 そんな国民民主も避難計画をしっかり審査してもらうだけという立憲の提案を断るのは難しい。参院選を控えて、支持基盤の労組のために反対しているとなれば、利権体質を見破られて、有権者からは強い批判を浴びるだろう。 ここで、立憲の提案により、避難計画が規制委の審査対象になれば、実際には審査を通る避難計画はないはずだ。だからこそ、国民民主にとっては、死ぬほど嫌な提案なのだ。