「太陽の塔」は「希有な公共芸術」「歴史知るのに欠かせない」…大阪府が世界遺産・国重文目指し報告書
1970年大阪万博のシンボル「太陽の塔」(大阪府吹田市)の世界遺産登録を目指す大阪府は、約3年間の学術調査の結果、「希有(けう)なパブリックアートで、大阪の歴史を知る上で欠かせない象徴的な建造物」とする報告書をまとめた。登録へのステップとして、まずは国の重要文化財指定を目標にしており、近く文化庁に提出してアピールする。(梅本寛之)
太陽の塔は、大阪万博のプロデューサーだった芸術家・岡本太郎(1911~96年)が万博のテーマ「人類の進歩と調和」に異を唱え、土偶を思わせる「反近代」の象徴として制作した。
2025年大阪・関西万博の誘致活動にあわせ、18年、松井一郎知事(当時)が将来的な世界遺産登録を目指す方針を表明。20年には国の登録有形文化財に認められた。国内の世界遺産は、大半が国宝や重要文化財のため、府は、重文指定に向け、21年度から建築や都市計画、芸術の専門家による学術調査を実施した。
報告書では、まず技術的価値を検討。円すい型で腕が張り出す構造は曲面が多く、実現が困難だったが、当時では珍しいコンクリートの吹きつけ工法などで建造しており、「設計者・施工者が高い意欲で取り組んだプロジェクト。残す意義は大きい」と評価した。
歴史・景観の面では、パビリオンが取り壊される中、存続を願う小学生の手紙や署名活動によって残った経緯を紹介。近年、漫画やアニメで「懐かしさ」の象徴として描かれていることも踏まえ、大阪公立大の橋爪紳也・特別教授(都市文化論)が「高度成長を次世代に継承する史跡。文化的景観として価値を有する」と評した。
武蔵野美大の春原史寛教授(美術史)は芸術的な観点から検証。独特のデザインについて「以前から『そこにある』印象を与える」「見る方向で様々な物語を発見する」と言及した。
府の担当者は「来年の大阪・関西万博にあわせ、塔の価値を広く伝えたい」と話す。
昭和以降の重文・国宝指定は5%未満
国の重文指定や世界遺産登録に向けてハードルになりそうなのが、築年数の浅さだ。