レゾナックがAIを活用した材料探索ツールを開発、配合から試作までの時間を5分の1に
レゾナックは2024年11月14日、AI(人工知能)を活用し材料の最適な組成を従来と比べて5分の1の時間で探索できる独自技術を確立したと発表した。 アニーリングによる配合最適化システム[クリックで拡大] 出所:レゾナック 同社は、この技術を用いることにより、半導体パッケージ用レジストの感光性樹脂の原料となるポリマー(重合体)の探索に成功。この実証結果を受け、同社は材料探索の汎用ツールとして同技術の社内展開を開始した。
アニーリング技術も活用
近年は半導体パッケージにおける配線の微細化が加速しており、配線を形成するために用いるレジストの感光性樹脂には高い解像度が求められている。感光性樹脂を構成する材料のうち、ポリマーが性能に与える影響は大きく、ポリマーには現像性が良好なことや感度が高いことなど複数の要素が求められる。 ポリマーは、多数のモノマー(単量体)が結合したもので、これまで多数のモノマー候補の中からモノマーの組成比/種類も含めた最適な配合を見つけることは、組み合わせが膨大なため困難だった。 そこでレゾナックは、複数の目標特性値を設定し、AIモデルによりこの特性値を満たす最適なポリマー物性を計算した後、アニーリング技術を適用することで、短時間で最適なモノマーおよび、その組成比を求めることに成功した。 例えば、モノマー100種から5種選び、さらに組成比の合計が100%となるように各モノマーの組成比を1%刻みで計算する場合(組成比の例:20:20:20:20:20、10:10:5:5:70など)、従来法では概算で約10万年かかるが、アニーリング技術を使うと約10秒で計算できる。 同技術で算出したポリマーを用いた試作品は、良好な特性を示すことが実験で証明された。現在は、添加剤など他の材料を含めた最適化に取り組んでいる。なお、同技術を活用することで、配合から試作までに要した時間は、熟練者が行う場合の5分の1に短縮できる。 同社は、同技術を活用して、汎用的な配合最適化システムを構築し、社内展開を開始した。このシステムでは、ユーザーが組成物の目標物性とそれを構成する原料の物性を入力すると、目標物性に近い原料配合比率を得られる。 なお、今回の技術は、レジストポリマー設計に限らず樹脂設計や複合材料など幅広い分野に使用できる汎用的な技術で、レゾナックが強みとする半導体後工程製品へも活用を開始している。 また半導体の技術革新加速に伴い、高性能な材料を迅速に提案することが求められている。そのような中、同社は、ミクロやマクロのシミュレーション、AI、MI(マテリアルズインフォマティクス)など、計算科学、情報科学をフルラインアップで保有する計算情報科学研究センターのリソースの7割を半導体材料開発に投下し、成果を上げている。
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