「背高モデル」全盛時代に一石 新型アルトは軽の世界を変えるか?
ダイハツ・コペンやスズキ・ハスラーなど、軽自動車のニューモデルに例年になく注目が集まった2014年だったが、年の瀬も間近となったところで、またもや興味深い1台がデビューした。 スズキの新型アルトだ。スタイリングからして強烈なインパクトがある。背高箱型がずらりと並ぶ軽自動車の現況にあって明らかな異彩を放つ形だ。
「背が低いモデル」不遇の時代
現在、軽自動車の世界は背丈別で3種類の構成になっている。全長×全幅を3395×1475ミリに制限されている軽自動車の場合、長さと幅は限界まで使うしか手が無い。だから大きさを変えたければ背丈で変える。 例えばスズキの場合、一番低いのはアルト(1,535ミリ/旧モデル)、真ん中がワゴンR(1,640ミリ)、一番高いのがスペーシア(1,735ミリ)という構成になっている。 業界全体で、アルト・クラスを選ぶ顧客は長期減少傾向にあった。とくに「子どものお迎えに行ってそのまま自転車を積んで帰れます」が売りのスペーシア・クラスがその解り易いメリットで大躍進を果たし、割を食った部分も少なくない。そうした背景にあって「低いことがメリット」と自信を持てなくなったアルト・クラスは商品性がどんどん解りにくくなっていった。 「軽の全部が背の高いモデルでいいのか?」という議論は、軽の話をすると必ず出て来る議題だが、実は自動車メーカーも以前から同様の想いは強く持っていた。例えば、2006年にはダイハツがソニカで「背の低い軽自動車」の再提案をしたが、結果を得られずに短期間で撤退を決めた。 クルマに詳しい方の中には新型アルトを見て「ソニカの二の舞になるのではないか?」と思う人もいるかもしれないが、どうもそんなことはなさそうだ。 ソニカは評論家ウケの良いクルマだったが、所詮は派生車種。当時のダイハツは主力のミラで冒険するのを嫌って、世に問う提案型モデルをスペシャリティカー枠でリリースした。だが、販売店も顧客も全てのニューモデルのコンセプトを全部理解しようとしてくれるわけではない。 クルマが良くても腰の引けた売り方で売れるわけがない。説明と理解を要するそんなコンセプチュアルなモデルは、主力車種同様にしっかり見てもらえなければ終わりだ。それがああいう結果を産んだのではないかと筆者は想像している。 なかなか上手く行かない軽の低いクラス、つまりアルト・クラスをどうするのかは軽自動車メーカー全社の悩みどころだった。そこに、これまでにないチカラの入ったモデルが出て来た。それが新型アルトなのだ。