「背高モデル」全盛時代に一石 新型アルトは軽の世界を変えるか?
軽では「珍しい」シャシー新設計で軽量化
アルト・クラスを魅力的な商品にするためには、背丈の異なる他クラスと比べたアドバンテージを伸ばすことだ。空間サイズと搭載性の問題から、どうしても「デカく四角く」という制約がはたらく他クラスに比べれば、アルト・クラスはデザインの自由度が高い。小さいから軽く作れる。空気抵抗が少なく軽ければ燃費が良い。車高が低ければ重心も低く運動性能が高められる。 新型アルトの発表会があった22日、業界人のつぶやきがネットを駆け巡った。「最軽量モデルは610キログラム」。「先代モデルから60キログラム軽量化」。個性的なデザインに加えてここでもスズキはきっちり結果を出して来た。 なかなか理解してもらえないことだが、700キロ級のクルマが60キロ減量するのは並大抵のことではない。正直なところどんな手品を使ったのかと思ったくらいである。 その答えは新設計のシャシーにあった。軽自動車のシャシーはそう滅多に新設計されない。3世代から4世代くらいは平気でキャリーオーバーされる。それだけコストがキツイのだ。新設計すれば15年以上はそれで頑張らなくてはならないことから考えても、おそらくスズキは総力を結集してこのシャシー開発に当たったのだろう。 まず、シャシー全体をできるだけ滑らかな形状にすることで、部分的な応力の集中を防ぐとともに、補強板の溶接などを減らしている。物体はすべからく、滑らかな方が丈夫になる。丈夫になれば板厚を下げられる。 ところがこれに補強を加えようとすると補強板を溶接したところに力が集中するので、部分的に板厚を上げなくてはならない。これが重量増を呼ぶ。形状をできる限りスムーズにして、補強材を減らせば、軽くて丈夫にできる。さらに加工コストも下がっていいことづくめだ。
サブフレームのフラット化やボディ素材見直し
もう一つ「その手があったか」と思ったのはサブフレームのフラット構造化だ。1990年ころまでのクルマは、サスペンションパーツを直接モノコックフレームに組み付けていた。 しかし現代のクルマは前後サスペンションのためのサブフレームを別に持っている。これは、力の部分集中を嫌うモノコック・ボディの特性によるものと、サスペンションが別にアッセンブリー組み立てできることによる組み立て効率の向上の二つの側面がある。あ、いや、一番一般的な説明が抜けていた。サブフレームとモノコックの間をラバーマウント化することによる音と振動の遮断を最初に挙げるべきだった。 そのサブフレームの形状をフラットに作り、モノコックの補強も兼ねてしまおうという考え方だ。モノコックからサブフレームが独立したことに対して、少し意図的に逆戻りするアイディアだ。これには頭の柔らかさを感じる。 リリースには特に記載されていないが、サブフレームをフラット化すればクルマのアンダーボディーの空力が向上し、燃費にも高速安定性にも効いてくるはずだ。しかもしれっと書いてあるが前後サスペンションのストロークも増えている。 ボディも素材のレベルから見直した。高張力鋼板という強度の高い鉄板の採用範囲を広げ、重量比で46%まで拡大した。