就職、起業、32歳でWリーグへの挑戦ーーバスケ選手・桂葵がこの10年のキャリアと道のりを語る
「好きなものを好きで居られる環境があるのは、安心材料になるかもしれないと思った」
ー先ほど「自分らしいスタイルで優勝ができた」とお話しされていましたけど、ZOOSは桂さんの価値観やバスケのスタイルをかたちにしたものだと思います。ZOOSがどういった場所か、あらためて聞いてもいいですか? 桂:ZOOSのミッションは女性を取り巻くスポーツの環境をリデザインしていくことです。だからチームより先にリデザインされたい「人」があって、ZOOSがある。もちろんクラブチームの運営会社としての役割も担っているのだけれど、でもチームとして世界一になることや勝つことが最優先ではなくて。例えば、さっき話したワールドツアーにしても、「ワールドツアーにチャレンジするので集まってください」ではなく、チャレンジしたい4人が集まったからワールドツアーに出場した。 桂:多様な人生があるなかで、そのまま自分を持ち寄って集うことで、より豊かになりたいと思っていて。だから、私がみんなに言うのは「自分の意思でここに来てね」ということです。物差しは自分で持ったうえで、選んで来てほしいというのはチームメンバーにも、ZOOSに関わってくれる方々に伝えています。 ー強制されるものではない、人生をよりプラスにするためにZOOSに来てほしいということですよね。どうしてそういうコンセプトのチームをつくろうと思ったんですか? 桂:ZOOSを立ち上げたのは29歳のとき。私は、結婚、出産、移住、転職といったライフイベントにこだわりがない人間なのですが、そんな私でも30を迎えるときに少し怯えたんです。「いま何をしたらいいんだろう」という焦りではなく、この先10年間ですごく変わる可能性を考えたときに、怯えた。 ーすごくわかります。自分の仕事も生活も体も大きな変化があるだろう、と想像して怖かったのを覚えています。 桂:特に女性は多くの人が感じる怯えだと思います。そういうときに、変わらず好きなものを好きで居られる環境があるのは、安心材料になるかもしれないと思ったんです。未来の自分に向けた「自分らしく生きていけば大丈夫だよ、ZOOSが解決してくれるよ」というメッセージでもあったかな。これはZOOSを2年半続けても変わらないメッセージです。ZOOSで世界が変わることはないかもしれないけれど、たまに背中を押したり、人を支えたりできる存在になりたいな、と思っています。