国連事務総長が「5大国」を批判 ワガママな「ジャイアニズム」国家の行方は?
先進国 vs 途上国
陣営といえば何かものものしいが、世界の国々を二つに分ける場合、従来ふたとおりの考え方があった。一つは「先進国」と「途上国」という分け方であり、もう一つは「西側」と「東側」という分け方である。 第1の分け方は、「先進国」と「途上国」という呼び方自体に、世界の国々がすべて西欧から始まった「近代文明社会」に向かって進むという前提がある。その進んでいる程度の差によって国々の状態が決定的になるという考え方だ。 それは遠く16世紀以来、近くは19世紀以来、もっとも顕著な実利的な国の違いであった。科学技術文明の発達した先進国が、未発達の途上国を植民地にしたからである。世界の平和と秩序を守る国際機関が存在しない状況では、文明は力であり、力は正義であった。その文明力の強い国々が「列強」というものである。 18、19世期、まずイギリスが先進強国となり、フランスとアメリカが続き、ドイツと日本が続き、ソビエトは社会主義によって強国化した。今は中国が急速に強国化している。そう考えれば「国家社会主義」も「マルクス社会主義」も、やや遅れた国が急速な先進強国化を遂げるための手段であったと理解できる。 そしてこのところ、経済、科学、技術における途上国のキャッチアップが急速で、先進国に近づいている国に「新興国」という言葉を当てるようになっている。
西側 vs 東側
第2の分け方は、やや習慣的なものだ。「西側」と「東側」という分け方で、これは基本的にヨーロッパからの見方にもとづいている。第二次世界大戦後のヨーロッパは、自由主義と資本主義を標榜する西ヨーロッパと、社会主義を標榜するソビエト連邦とその衛星国すなわち東ヨーロッパとに分けられた。それがカトリック+プロテスタント vs ギリシャ正教+ロシア正教、ゲルマン系 vs スラブ系という、もともとの文化と民族の違いにも重なっていた。 そしてその西側がアメリカにまで延長され、東側がアジアにまで延長され、旧来の「西洋と東洋」という曖昧な分け方に重なっていた。日本はもちろん東洋であるから地理的には東側ということになる。ところが、僕の研究室で博士の学位を取ったケニアからの留学生は「先生、アフリカでは日本はウエストなんです」という。つまり第二次世界大戦後に独立した国々にとって、日本はアメリカの延長としての「西側」であり、中国や韓国までは「東側」であるというのだ。「なるほど、ところ変われば見方も変わる」と思わざるをえなかったが、現実に大戦後の日本は、冷戦時代も、米中対立時代も、西側陣営に軸足を置いている。 しかし現在は、ロシアも中国も、経済的にはほぼ資本主義化しているので、前回論じた「交換的」な国と「統制的」な国という分け方の方がいいかもしれない。これは、経済的には市場経済(価値交換)と計画経済(統制)、政治的には議会的(意見交換)と集権的(統制)、文化的には人間主義(現実と理念の交換)と超越主義(宗教と思想による統制)というような意味である。 前回論じたように、これまでは、科学技術と経済が発達して近代化した社会は、封建的な専制社会から自由で民主的な社会に移行するという前提があった。すなわち第1の陣営論と第2の陣営論が重なったのだが、現在はそれが崩れている。むしろその社会体制の違いの原因を文化的な違いに求めることも有効だろう。前回はそれを海洋国と内陸国として論じた。科学、技術、経済はキャッチアップしても、文化の溝は埋まらないということである。