全高級車メーカーが慄いた!! 初代セルシオのヤバさはココだった
静かで振動も少なく、乗り心地のいい昨今のクルマですが、かつて自動車の品質を一気に底上げした日本車があります。もちろん、トヨタ初代「セルシオ」です。 スカイラインに赤バッヂ復活でオジサン感涙?回顧主義に走っている日産だが…これだけは言わせて! それまでの「安い小型車」という日本車のイメージを、一気に引き上げてくれた初代セルシオ。セルシオの登場をきっかけに、BMWやメルセデスベンツ、ポルシェなど、世界の名だたるメーカーも、その品質に追従するようになったといわれています。初代セルシオの何がどう凄かったのか。その凄さを振り返ります。
■日本車の信頼性と経済性に、欧州の高級車の性能と安全性を加えた
トヨタ「セルシオ」は、1989年に登場。日本では「セルシオ」としてデビューしましたが、北米では、レクサスの「LS400」として、日本でセルシオがデビューする2か月前である、1989年8月にデビューしました。 開発のきっかけは、80年代中頃に起きた日米の貿易摩擦。経済についての詳しい説明は省きますが、要は「安くて壊れなくて燃費のいい日本車」というだけでは、北米で生き残れないと踏んだトヨタが、利益率の高い高級車を開発して市場に参入しようという考えたことがきっかけだったようです。 しかし北米で人気の高級車といえば、すでにメルセデスやBMW、GMなど歴史あるメーカーが市場を握っている状態。そこに「安い小型車」イメージのあるトヨタがいきなり参入しても難しいのは明らかであることから、トヨタは、欧州の高級車に匹敵する性能と安全性、そして日本車ならではの信頼性と経済性を象徴する高級ブランド「レクサス」を立ち上げたのです。そしてそのフラッグシップモデルとして開発されたのがLS、つまり日本の「セルシオ」でした。
■あまりにも高い品質から、欧米メーカーがバラバラにして徹底的に研究したほど
初代セルシオ(レクサスLS)の開発チームが立てた目標は、当時の高級車として世界最高レベルとなる、最高速度は250km/h、燃費は22.5mpg(マイル・パー・ガロン、メートル法だと約9.56km/L)、空気抵抗値0.28、100km/h走行時の騒音58~59デシベルというもので、この目標はチームのメンバーでさえも驚愕するようなものだったそう。 特に静粛性は、メルセデスベンツやBMW、GMといった高級車メーカーの音振性能を大きく上回る目標。この目標を達成するため、開発チームは、クラウンやセンチュリーをベースにブラッシュアップするというのではなく、開発のすべてを最初からやり直すことを選択します。 特に振動・騒音については、吸音材などの事後処理に頼る一般的な対策ではなく、タイヤ構造やサスペンションに組み込まれているブッシュ、取付点の車体剛性、エンジンマウント(振動が伝播してノイズが発生する)など、その騒音の元となる部品を厳しく追及して、根本から排除する「源流対策」です。 騒音の分野だけでなく、振動、走行性能、ハンドリング、乗り心地などあらゆる分野において源流対策が実施され、細部まで入念な工作と仕上げがなされました。あまりにも高い基準を達成するため、計測器や工作機械も新たに製作したそう。この一切の妥協のない開発には、延べ1400人のエンジニアが携わり、450ものプロトタイプがつくられ、およそ2700万マイル(およそ地球100周分)を超える走行テストが敢行されたといいます。 こうして、とてつもない目標が達成されて完成した初代LSは、その優れた静粛性とあまりにも高い品質で、デビューするやいなや、北米で大ヒットを記録。欧米の競合メーカーはこぞってLSを買い、バラバラにして徹底的に研究したそうです。初代セルシオの、まるで宙に浮いているような感覚を覚えている人もいるでしょう。セルシオは、その後の高級車の静粛性のレベルを引き上げるきっかけとなったモデルなのです。