「孤独のグルメ」ファンの矛盾! 全然“孤独”じゃない聖地巡礼、本当にそれでいいのか?
「無駄」が価値に変わるワケ
ここからは、交通・運輸・モビリティ産業のビジネス媒体にふさわしい内容になる。 一見、無駄に見える部分だが、今や新たな観光形態として注目されている。2024年の『情報処理学会論文誌』Vol.65 No.1に掲載された伊藤淳子・今和泉雅清の論文「あいまいな情報提示により観光者の興味を周囲に向けるまち歩き観光支援システムの提案」では、「まち歩き観光」を 「観光ルートや目的地を定めない,自由度の高い観光形態」 であるとし、 「一見何もないようなところから、何かを見つけ出そうとする観光者の主体性が、まち歩き観光の価値向上につながるとされる」 として、 ・観光ルートの最適化 ・スポット推薦 などの観光支援手法は興味を引きつける対象が限定され、新たな発見や体験を促すことは不向きであると指摘する。 この論文では、写真共有SNSの投稿データ(タグ情報や位置情報)を活用した観光支援システムを使い、和歌山市内で従来の紙媒体を使った観光支援と比較した結果を報告している。このシステムの目的は、利用者が提供されたタグ情報を基に周辺を探索することで、新しい発見や体験を促すことで、次のようなものである。 ・利用者の現在地周辺に存在するタグ情報を最大7個提示する ・タグ情報は、写真に付与されたハッシュタグやキャプションの一部から抽出される システムの画面には、タグ情報と地図が表示される ・タグ情報は、利用者の現在地からの距離が近い順に表示される ・タグ情報の位置は地図上に表示されない この結果、 ・被験者はタグ情報に合致するものを探す過程で周囲に目を向けるようになり、周囲に目を向ける時間が増加した ・一見何もないようなエリアにおいても利用者の興味を周囲に向けることができた として、 「特に訪問経験のない被験者にとって,提案手法の使用が周囲に興味をいだくことや,その対象を 探す行為につながり,比較サービスと比較して周囲に目を 向ける時間が長くなったと考えられる」 としている。つまり、情報をあいまいにすることで周囲への関心が高まり、新たな発見や体験を促す効果があるということだ。