まさかコレで訴えられるとは! 後輩へのアドバイス、親切心でも「言ってはいけない」ワケ…思わぬ《パワハラ騒動》に関係者が青ざめた
価値観による線引きがずれている
●N坂さんをはじめ、若手社員の仕事ぶりや言動、服装、髪型に口を出したことはある。ただし、人格否定をするようなことは言ったことがないし、声を荒げたこともない。 ●昼休みに雑談に誘った件については職場での親睦を深められればという思いで、それ以上のものではない。また、みんなで食事やランチに行こうと話しているときに、N坂さんだけ誘わないというのも不自然なので、そういうときは声をかけている。 ●意味の通らないメール、分かりにくい表現は誤解を生むので、気が付いたときは「丁寧でもくどすぎないように」などの注意をしたり、実際推敲案を出したこともある。実地研修の担当者を飛び越えて注意してしまったことについては反省している。 ●私の言動のせいで辞めた人がいるということは知らなかった。自分では思い至らない。 以上がA井さんから聞き取った内容の主なものです。 このあとT橋さんとともに行った第三者ヒアリングからも、A井さんの発言に嘘がないことが裏付けられました。また、実際にA井さんの言動を苦にして退職した人がいたかどうかについては、人事部でも調べることができませんでした。 「先生、A井はパワハラをしていたことになるんでしょうか?」 「パワハラというより、今回はセクハラにあたる可能性があると思います。服装やメイクに対する干渉はセクハラになります。ただ、業務に関連してのことなので、程度問題になりますね」 「ではN坂が過剰に騒いだということになりますか?」 「そうとも言い切れません。ただちにパワハラ、セクハラがなかったというのは早計です。 ただ、そもそも、今回のことはA井さんとN坂さんをはじめとした若手社員との間で、『どこからは組織の一員としてよくない行動だ』という線引きがずれていたことが問題になっていますよね? T橋さんからみて、A井さんの線引きは厳しすぎると思いましたか?」 「いいえ。まあ、多少保守的かなと感じるときもありますが、許容範囲内です」 「だとしたら、A井さんに個人的体験として指摘をさせるのではなくて、組織としてのガイドラインを示すほうがよいのではないでしょうか。N坂さんのような若手にも策定に協力してもらえば、それぞれの考え方が分かっていいのではないかと思います」