水原一平被告は今後どうなる

　メジャーリーグ・大谷翔平選手の元通訳、水原一平被告が日本時間の15日未明、裁判所に出廷しました。 　報道陣からの呼びかけに対し、表情を変えず終始無言を貫きました。 　水原被告への量刑はどうなるのか、アメリカ・カリフォルニア州の弁護士資格を持つ国際弁護士の村尾卓哉さんに聞きました。

水原被告の主張は「Not Guilty」　なぜ？

　水原被告は、今回の裁判では「Not Guilty（有罪ではない）」と主張しました。すでに司法取引で罪を認めていますが、今回担当した裁判官に司法取引の内容について単独でジャッジする権限がないため、形式的に無罪を主張しました。 　次回出廷する7月14日の裁判官は重罪事件の有罪答弁を受けられるので、次の裁判で無罪主張を撤回する手続きがとられる見込みです。

どうなる水原被告の量刑　司法取引の影響は

水原被告の量刑は

　水原被告は以下の罪に問われています。 　①銀行詐欺罪　 　賭博資金約25億7000万円をはじめ、野球カードの購入費や歯の治療費合わせて26億円以上をだまし取った疑いがもたれています。禁錮は最大30年です。 　②虚偽申告罪 　銀行詐欺で得た約6億3800万円の追加所得を申告しなかった疑いです。禁錮は最大3年。 　これらをあわせて、最大で禁錮33年、罰金は上限が約1億9400万円ということです。 　ただ、司法取引で罪を認めたことで減刑される見通しのため、村尾さんは禁錮5～8年程度の判決になるとみています。

大谷選手への返済も　罰金だけではない水原被告の支払い

水原被告が支払わなければいけない総額は30億円

　また、水原被告には罰金のほかにアメリカ財務省へ追徴課税約1億8000万円、大谷選手へ不正に得た約26億円以上などを支払わなければいけません。その総額は約30億円です。 　村尾さんによると、水原被告にはこの支払い義務があり、自己破産できず帳消しできません。 　水原被告を巡っては、現在アメリカでドラマ化が検討されているという情報があり、仮に取材に協力すれば、協力金がもらえるかもしれません。ただ、30億円の返済にとっては焼け石に水程度でしょう。

アメリカの"レベル1"刑務所は自由！？　更正せず帰国の可能性も

アメリカの刑務所の実態

　水原被告には来月14日に再出廷した数カ月後に量刑が言い渡される見通しです。 　有罪判決の場合、ビザが剥奪され速やかに刑務所に収容されます。刑期が終わると、日本へ強制送還される見通しとなっています。 　アメリカの刑務所にはセキュリティレベルという段階分けがあります。 　レベル1～5に分けられ、水原被告は初犯で暴力的な行為がないことが考慮され、レベル1か2に収容されるとみられます。 　レベル1の刑務所は、強固な高い壁は存在せず、服装も普段着風。生活面でも、テレビを見ることができ、刑務所の中で買い物もできます。さらに、監視下であれば外出も一部可能です。無理な命令もなく、24時間自由時間というような形です。 　一方、イーストカロライナ大学の犯罪学の専門家によると、アメリカの刑務所にはギャンブル依存症に特化した更生プログラムがありません。むしろ、刑務所内ではスポーツ賭博をはじめ様々なギャンブルが盛んに行われていて、それが文化の一部になっています。 　村尾さんは、アメリカでスポーツ賭博が解禁されてからまだそれほど時間が経っておらず、刑務所の体制が社会の流れについていけていないと指摘します。薬物依存などの場合はプログラムが存在しているということです。水原被告はギャンブル依存からの更正が図られないまま日本へ戻ってくる可能性もありそうです。

村尾卓哉弁護士

村尾弁護士

国際弁護士 金融や行政訴訟などを扱う。ニューヨーク州・カリフォルニア州の弁護士資格を持つ