史上初!韓国紙が日本人を東京特派員に据える理由
これに対し、大貫氏は中央日報のフルタイムの正規社員として採用された。 ■韓国語で書く難しさ ただし、韓国テレビのライブにも出演してきた大貫氏がいかに韓国語に堪能だとしても、母国語ではないハングルで書くことの難しさはないのか。 この点について、小此木氏は「大貫さんはそれほど自信があり、実力があるのでしょう。画家イ・ジュンソプについて本を出すなど、大貫さんには日韓の文化交流への優れたセンスがあります。日韓交流の橋渡しとなり、ぜひ活躍していただけることを祈念しております」と話した。
塚本氏も「実は韓国プロ野球を長く取材している室井昌也さんが韓国のスポーツ紙にコラムを書くなど、注目すべき先例はある。日韓のプロ野球界に広い人脈を持つジャーナリストならではの活動だが、大貫さんの中央日報入りはいよいよ一般紙、しかも有力紙への進出であり、また1つ大きな意味がある」と指摘する。 また、「韓国語の記事作成はどうしてもネイティブ並みというわけにいかないが、ソウルの本社のデスクがリライトするものと思われ、まったく問題ないだろう」と話した。
一方、成川氏は、前述の研究プロジェクトで大貫氏が韓国語を日本語に置き換える難しさについて話していたと指摘。「同じ漢字語を使うけども意味は微妙に違うという場合があり、直訳して誤解を生む可能性があるからです。日常会話ではたいした問題ではないかもしれませんが、例えば大統領の発言で、日本の新聞に掲載される記事の場合、敏感な問題となることもあります」と指摘した。 塚本氏は、韓国メディア勤務では言葉以外にも予想される大変さがあると指摘する。
■ネット上の批判が心配事 「先に述べた『韓国側がいかに日本を特別視しなくなったか』と相反することを言うようだが、今も韓国人は日韓関係には微妙な感情を持つ人が少なくない。例えば、大貫さんの記事にSNS上で悪意を持って批判する層なども存在すると思われ、中央日報はしっかり大貫さんを守ってほしいと願う。大貫さんには、それでもなお頑張って踏み込んだ内容を記事に盛り込んでいただきたい」とエールを送った。 日韓の社会全体を見れば、K-POPの人気女性グループのTWICEやLE SSERAFIMのメンバーに日本人が所属しており、大晦日のNHKの紅白歌合戦に出場するなど、若者の間でのサブカルチャーでの交流はすでに盛んになっている。
政治や社会問題、さらに言えば安全保障分野などでの協力はまだまだこれから先となる。大貫氏が少子高齢化や教育問題など日韓共通の課題に果敢に取り組み、日韓の相互理解の新たな、そして力強い架け橋になってくれることに大いに期待したい。
高橋 浩祐 :米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員