史上初!韓国紙が日本人を東京特派員に据える理由
■日本の朝鮮半島取材も変化 そして、2つ目の意味としては、日本人ジャーナリストの韓国取材の変化を象徴している点を挙げた。塚本氏は「1980年代の韓国の民主化闘争の時代は事件取材が重要と見なされ、ソウルに駐在したのは必ずしも韓国語ができるわけではない社会部出身の記者が少なくなかった」という。 そういう状況が変わり、近年は「韓国語ができて韓国事情にも通じていることが半ば当たり前となり、日韓関係や北朝鮮問題でも深い取材ができるようになった」日本人記者が大勢を占めると指摘する。
「今は女性記者が増え、彼女らはジェンダーや社会格差など、新しい問題に着目して取材の幅を広げている。大貫さんも、夫婦の愛の物語を通して日韓の歴史の裏面をたどる著作を出したが、やはり日本人ジャーナリストによる韓国取材の新しい姿の1つと思う」(塚本氏) 日本メディア出身で韓国メディアに寄稿しているジャーナリストはこれまでも多々いた。元朝日新聞記者で韓国在住の文化ジャーナリスト、成川彩氏もその一人だ。 成川氏は、「大貫さんとは昨年、ある研究プロジェクトでご一緒した関係で、毎日新聞から中央日報の東京総局に転職するというメールをいただきました。日韓の記者の間でも話題になっていますが、日本人が韓国の新聞社の特派員となるのは初めてのようです。私もびっくりしました」と話した。
そして、「中央日報の度量の広さというのもあると思います。私自身、2017年から長く連載していますが、こういう話題で書いてほしいという注文はあっても、こう書いてほしいという干渉を受けたことはありません。外国人の視点を尊重してくれていると感じます。特に日韓は少子高齢化をはじめ様々な問題で互いに参考にできる面もあり、日韓関係に限らず、大貫さんの中央日報での活躍は両国にとって有意義なものとなると思います」と話した。
さらに、「毎日新聞ソウル特派員としての経験が、今度は韓国の新聞の東京特派員として生かされる、画期的なことだと思います」と称えた。 日本常駐の外国人特派員の数は、アメリカの『タイム』誌やロサンゼルス・タイムズといったアメリカの有力メディアが相次いで東京支局を閉鎖するなどして、2000年代初めからぐっと減っている。 このため、フルタイムの東京特派員ではなく、東京在住のストリンガー(特派員契約記者)が目立つようになっている。筆者も10年以上にわたって、イギリスの軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」やアメリカの外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」のストリンガーベースの非常勤の東京特派員として働いている。