史上初!韓国紙が日本人を東京特派員に据える理由
東京総局長を務めていたベテラン記者の金玄基(キム・ヒョンギ)氏の異動に伴い、その欠員を埋める形で大貫氏が特派員として加わった。 大貫氏は早稲田大学を卒業後に2000年に毎日新聞に入社。前橋支局、政治部、外信部を経て2013年から2018年にソウル特派員を務めた。2012年と2016年に訪朝し、北朝鮮東部・元山や咸興など地方も取材した。 また大貫氏は、日韓夫婦の物語『帰らざる河ー海峡の画家イ・ジュンソプとその愛』(現在は『愛を描いたひと イ・ジュンソプと山本方子の百年』と改題出版)で小学館ノンフィクション大賞を受賞している。政治部記者としてのキャリアが長い。
■なぜ日本人記者を採用したのか 日本の年配の世代から見れば、日韓がかつて植民地と被植民地との関係であったことから、韓国メディアは一昔前までは日本に対する不信感や疑念が根強く、「反日世論」形成の旗振り役となっていた印象があった。その韓国メディアが日韓関係改善に一役買う形となる日本人記者を採用する意義はどこにあるのか。 日韓は現在、少子高齢化や人口減、教育など数多くの共通の問題に直面している。このため、大貫氏によると、中央日報側も日本の問題が「韓国の明日の鏡」や参考になる話になると判断した。
さらに、こうした諸問題は韓国人記者の日本現地取材では限度があり、深掘りが難しいため、大貫氏の採用に踏み切ったという。さらに、韓国メディアの東京特派員は概ね約3年という短い期間で異動しているという事情もある。 日本を代表する朝鮮半島問題専門家で慶應義塾大学名誉教授の小此木政夫氏は、「韓国メディアが日本人を特派員として雇うのは初めてではないでしょうか。一報を聞いた時は驚きました。すごいことです。時代ですね」と感嘆した。
そして、中央日報の大貫氏採用の理由として、同紙の会社としてのカラーを挙げ、「中央日報には柔軟性がありますね。つねに日韓関係を真剣に考えている影響もあったのでしょう」と推察した。 元NHKソウル支局長で桜美林大学の塚本壮一教授は、中央日報の大貫氏採用には2つの大きな意味があると指摘した。 1つ目としては韓国側の対日意識の変化を挙げた。「日韓関係がかつての『日本が上、韓国が下』という垂直な関係から水平の関係になったとかねて指摘されているが、日本人記者が韓国メディアに入ることに中央日報の読者や一般市民がさほど反発しないだろうという見通しが中央日報にあるからにほかならず、韓国側がいかに日本を特別視しなくなったか、もっといえば意識しなくなったかを示しているのではないか」と指摘した。