「父との電話で涙があふれました…」 コロナ禍で一人暮らしの大学生が追い込まれる孤独
SNSを過信してはいけない
現代にはスマートフォンのアプリなどさまざまなコミュニケーション手段がある。自粛期間中、多くの学生はこうしたツールを使って友人たちとやりとりしている。だが、筑波大学保健管理センターで学生を診察する精神科医の白鳥裕貴さんは、コミュニケーションの重要性は認めつつも、SNSを過信してはいけないと指摘する。 「ツイッターやインスタグラムは評価を求めるアプリです。『いいね』のような評価を求めていると、気の利いたことをつぶやこうとしたり、“映える”写真をアップし続けたりしなければならなくなってしまい、これにもまた追い込まれてしまうのです」 同時にもう一つ懸念しているのが、睡眠リズムの乱れだという。 「ひっきりなしに送られてくるメッセージに振り回されていると、夜中まで起きていないといけません。そうすると睡眠リズムが乱れます。毎年、大学の春の健診で、抑うつ状態の学生をスクリーニングしているのですが、毎年5%程度のところ、昨年は10%に倍増しました。その要因の一つは、睡眠リズムの乱れだと考えています。これが抑うつにつながりやすい。20歳ごろは、人生でも最も朝起きづらい時期なので注意が必要です」
何も経験できないまま2年生に
SNSに費やす時間が少なくても、大学の休校やオンライン化で夜型になった学生も多い。大阪出身で、首都圏の大学に通う1年の大里拓也さん(仮名)もその一人だ。家にこもっていた春の時期は、夜型の生活に移行していったという。 「夜は動画サイトを見たり、本を読んだり。好きな時間に寝て、好きな時間に起きる生活でした」 大里さんは昨年3月末に上京し、一人暮らしを始めた。しかし、入学式は中止で授業も始まらない。一人で家に閉じこもる生活に耐えきれず、4月末から1週間ほど実家に帰省した。だが、その間も地元の友達と会うこともなく、ひっそり暮らした。いくぶん心は落ち着いたが、東京に戻るとまた不安になった。 講義はオンラインでキャンパスに行くことはなく、一人の友達もできない。自分が大学生なのかという疑問も覚えた。初めて大学生になった実感をもてたのは、6月にアルバイトを始めたときだった。 「飲食店で週3、4回バイトをして、大学生になった気がしました。ようやく人にも会えました」 大里さんの悩みは大学入学から間もなく1年になるものの、友達をつくれていないことだ。 「9月からの秋学期は対面の授業が週1回ありますが、座席が段ボールのようなもので仕切られていて、隣の人と話せるような雰囲気ではありません。新歓オリエンテーションもなく、サークルにどうやって入るのかもわからないまま1年生が終わろうとしています。2年生もこのままいくとしたら、僕らはどうすればいいんでしょうか」