SF作家の安野たかひろさん・編集者の黒岩里奈さんと語る、Z世代以降の働きかた。システムの問題とどう向き合う?
「いまシステムを変えないと、自分たちも苦しくなったときに誰も助けてくれない」
―すごく面白いです。里奈さんのお話を聞きながら、私も昭和の価値観を引きずってると思いました……。いまはまず置かれた状況が違っていて、年功序列や終身雇用が当たり前ではなく、正解が見えないなかで自分の生きかたや働きかたを早い段階から探さないといけない。そのハードさはすごくありますよね。年功序列のようなシステムが解体されているなかで、意義のある仕事をしたいと思っている。システムと言えば安野さんの得意分野ですが、まだ企業がシステムを提供できていない、みたいな感じかもしれませんね。 安野:まさにおっしゃる通りだと思います。働きかたも変わっていくし、日本の場合は労働人口がどんどん減ってきていますよね。新卒に入ってもらって長く働いてもらうためにあらゆる企業が努力をしていますが、やっぱりZ世代の方々の求めるものとはちょっと違っているということがいろんな会社で起きていると思います。 それと、Z世代の彼らが働く意味について早く気づいているだけで、我々もじつは同じ問題にあとから気づき始めて直面する可能性もある。 ―たしかに、いまは迷いがなくとも、10年後くらいのタイミングでぶち当たるかもしれません。 黒岩:麻布さんがあるインタビューで答えていてハッとしたのが、Z世代のためにいまシステムを整えることはとても大事で、なぜなら自分たちが40歳、50歳になったとき、そこでぶち当たる壁を彼らが先にやってくれていると。ワクチンのように先に警鐘を鳴らしてくれていて、いまシステムを変えないと、自分たちも苦しくなったときに誰も助けてくれないということを話されていました。これもシステムの問題だなと感じました。 ―先ほど安野さんに小説家になった経緯を聞きましたが、里奈さんはどういった経緯で編集者になったんでしょうか? 黒岩:もともと私は都市工学部で都市をどうデザインするのかということを学んでいました。もともと文化的なものにも興味があったので、都市設計から文化にアプローチできたらと思っていたんですが、大学時代に3.11が起きて、国立大学だったこともあり、ほとんどの授業が防災の話になったんです。そのとき、ハードを変えることもすごく必要だと思っていましたが、自分はソフトの方から、コンテンツを通して文化的なものに関わりたいなと思って文学部に編入学しました。 自分が書くという選択肢もあるなかで、編集者のいいところは一対一で作家さんと伴走できることです。大きな人数で一つのものを合議制でつくるというよりは、圧倒的な個の才能がある人と伴走できるという編集者という仕事はすごく面白そうだと思ったんです。