SF作家の安野たかひろさん・編集者の黒岩里奈さんと語る、Z世代以降の働きかた。システムの問題とどう向き合う?
Z世代の働きかたを描いた麻布競馬場さん著作の『令和元年の人生ゲーム』
―里奈さんが担当編集をされている麻布競馬場さんの『令和元年の人生ゲーム』(文藝春秋)は、Z世代の仕事感に迫っていくような小説でした。20~30代にとって働くってこういうことなのかなとリアリティを感じたんですが、麻布競馬場さんとはどのようにこの作品をつくっていかれましたか? 黒岩:私が1990年生まれで麻布さんが91年生まれで、いわゆるZ世代のひとつ上の世代なんですが、コロナ禍に新卒の方が入ってきたとき、自分が当たり前だと思っていた働きかたが違うぞということを感じたんです。麻布さんも実際に会社で働いてるなかで感じることがあって、それは何なんだろうと思ったところからこの話がスタートしました。 黒岩:30代前半くらいはまだまだ会社では若手か、中堅になる手前として扱われます。でも、あきらかに自分たちはある意味で平成を引きずった世代で、昭和世代の親に育てられていて、初めて会社に入って仕事を教えてくれたのも昭和世代の先輩です。そんな私たちの世代と、コロナを経て入ってきてくれた、平成世代に仕事を教わることになる令和世代と、それは働きかたが変わるよねということが今回の話のきっかけではありました。 ただ「最近の若者は働かないね」みたいな話ではなくて、突き詰めていくと、彼らがハードに働くことになぜ抵抗があるのかというところに行き着いて、それはもしかしたら今回の安野の選挙戦にもつながっているような気がしています。というのは、何かを落とすということではなく、本来の意味での「生産的な活動」をしたいというのが彼らのモチベーションなんだろうと思ったんです。 社内の誰かに勝つとか、そういうモチベーションではなく、もっと社会的に意味のある活動をしたいというモチベーションが強い世代で、もしかしたら世代というよりもいまの空気がそうなっているんじゃないかと思うんです。 ―なるほど。 黒岩:それを自由に発話できるのがいわゆるZ世代なんじゃないかと気づいたとき、この『令和元年の人生ゲーム』がちょっと違うステージにいったと感じています。