堀田力さん、脳梗塞で倒れ「ざんねんでやるせない」…最後まで「挑戦」驚きの回復
戦後最大の疑獄といわれるロッキード事件を捜査した元東京地検特捜部検事で、退官後は公益財団法人を設立して福祉活動に尽力した堀田力(ほった・つとむ)氏が老衰のため、11月24日に死去した。90歳だった。葬儀は近親者で済ませた。喪主は妻、明子さん。後日、お別れの会を開く予定。
日米の政財界の利害が複雑に絡み、司法や時効の壁が立ちはだかったロッキード事件。捜査について尋ねると、机の上にたまたまあった小さな付箋を手でもてあそびながら何も見ず、半世紀前の事件の詳細を滔々(とうとう)と、熱く語った。当時88歳。「カミソリ検事」の片鱗(へんりん)を見た思いがした。
司法の世界で30年、福祉の世界で30年――。「人生を2度生きた」といわれるが、「3度生きた」のではないかと思う。
3度目の人生は、2022年暮れに脳梗塞(こうそく)を患い、左側の視野を失い、右目で文字を読んでも意味が認識できない症状に見舞われてから始まった。自分では何もできず、妻の姿が見えないと不安で仕方ない。
<えー? なんで??? なんで私がこんな目に合うの?!!!>
そんな言葉から始まる日記には、残り少ない人生最後の大仕事として子育て支援の充実に動き出したばかりなのに、倒れたのは<ざんねんで、何よりいっしょにやり出したなかまたちに申しわけなくて、何ともやるせない>とある。
日記には、戦争と神の話や、生きていても迷惑をかけるばかりと全身を押し潰す<黒い感情>、<絶望→自死直行の黒く強固なかたまり>のことも出てくる。
一方、黒い塊を不思議にとかす妻の抱擁や、抱擁から得られる生きる力こそ、赤ん坊や今の子どもたちに必要ではないかという考察もつづられている。
5回にわたる脳梗塞や持病の心臓病に苦しみながら、字を読む訓練を重ね、読書を楽しめるまでに回復した。リハビリへの努力と執念は周囲が驚くほど。様々な取材の依頼も受け、「文芸春秋」11月号に掲載された特集では、ロッキード事件について2時間弱にわたるインタビュー取材に応じた。